「燃えよ剣」司馬遼太郎〜たたみいわしの威力〜
幕末の歴史といえば長州藩贔屓だった当時中学生の私を、新撰組という古来より伝わりし沼に突き落とした作品であります。もう、どちらかなんて選べない!!今なら中大兄皇子と大海人皇子に挟まれた額田王の気持ちが理解できる気がする......(なんて盛大な勘違いなのでしょうか)と、心が千々に乱れる体験を初めて味わった作品でもあります。
すっかり大人となりました今、読書の秋にこの大好きな作品を読み返してみました。中学生の時と同じようにドキドキハラハラしながら一気に読み進め、ページをめくる指が止まりませんでした。
本作品において、なんといっても私の心を虜にしたのは今も昔も沖田総司様でした。中学生の時は「天邪鬼な私が薄幸・美青年・天才剣士なんてスペックの三段重のような御仁を好きになるわけがない」などと意地を張って読み始めましたが、初登場後数ページで早くも骨抜きにされた記憶があります。土方さんの隣にいると、その天真爛漫でちょっぴりずれているところがなんとも輝くのです。これには降参で、再読しても、やっぱり沖田さんが大好きなことに変わりありませんでした。物語の筋で忘れている箇所はあっても、沖田さんのセリフは正確に覚えていた自分に少し引いたのでございました。
そして!忘れてはならないのは本作品のヒロイン・お雪さんです。彼女が喧嘩士・土方さんのツボをついていく様がなんともいえず、私を悶えさせるのです。お雪さんが土方さんとの会話の中で、「たたみいわし」が好きだというシーンがあるのですが......これが!!反則級の可愛らしさなのです!!!このシーン以降、私の中で「燃えよ剣」=「たたみいわし」という方程式が出来上がってしまいました。それほどの悶絶シーンなのです。私はこのお二人にあやかり、たたみいわしを縁結びのご利益がある食べ物と認定しております。
沖田さんとお雪さんにフォーカスしましたが、読む前は長州藩にとって鬼のような人だと思っていた土方さんも、読み終えた時にはたまらなく大好きになっておりました。最後まで戦うという生き様......。中学生の時には「私も自分の美学に殉じたい!」と真っ直ぐな感想を抱きましたが、今やすっかり角の取れたまん丸な社会人になってしまいました。再読したことで、少しは初心に帰れたかな?帰れていたらいいな......と思っております。