"今何をすべきか"より"相手が今何をしてほしいか"を考えるとすべきことは自ずと見えてくる
内容は医療現場の話だけど、この気付きは日常生活でも、もし今後私が違う職業を選んだとしても、OLになったとしても、母になったとしても、大事にしたいなと思うこと。
でも、そんな中で患者さんは必ず心か身体かその両方か、何処かが弱り、そして何かを求めているから、その"何か"の手助けが出来たらいいなと、それが私が看護師という仕事を選んだ理由。
今では、何かできたら、、、どころか、たくさんの幸せをもらい続けてしまう看護師になっているのだけど。
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看護師という仕事は日々とにかくたくさんの人とコミュニケーションをとり相手の気持ちを考えて行動する。1分1秒の単位で変わる"今すべきこと"を頭の中で常に整理しながら、時には機嫌が悪い医師に依頼したり、時には患者さんからの攻撃的な態度に遭遇したり、それでも努めて穏やかにふるまう。
基本的にあまりイライラすることがない私は、そんな時に穏やかに振る舞うこと自体はそこまで苦痛では無い。
しかし、医師への報告や、急変(容体が急激に悪くなること)、苦痛がなかなかとれない患者さんの対応というのは、何が"今すべきこと"なのか何十回何百回何千回経験しても毎回、これでいいのか、もっとやれることはないかと不安になり、そして緊張するものだ。
夜勤で入院してきて担当した患者さん。
痛みが取れず、どんどん痛みは強くなり波があった痛みは次第に持続する痛みになっていた。
痛み止めも効かない、当直の先生は朝専門医が来てからしかこれ以上何もできないという。
「今私は何をすべき??何ができる??」
これ以上薬も使えない、先生もあと2時間は待たないとこない、でもとてもじゃないけど何もせずにはいられないほど苦しんでいる、、、
痛みをとってほしいというのが今の患者さんの1番求めるところだとは思うが、それに対してもう私にはしてあげられることがない。
とりあえず、痛くて痛くて汗をかいている患者さんに冷たい枕を差し出してみる。
痛みが一瞬落ち着いたところで、部屋の温度を尋ねてみる。
暑いとのことで、温度を下げた。(個室なので個人に合わせて対応できる)
考えを巡らせる。
あと私に何ができる。何をすべき??
違う!!!まず、こっちを考えよう!!
→この人の立場になったら、今、何をしてほしい?
今患者さん自身も、看護師にはもうやれることがないとわかっていてもそれでも、痛みのたびにナースコールを押してくれる。助けを求めてくれる。
もし私がこの状況だとしたら、何をしてほしい?この人は痛い時に誰かにいてほしいのかもしれない。
そう思った私は
他の患者さんに呼ばれるまで、ベッドサイドでしゃがみ、目線を合わせて腰(痛いのは違う部位だけど直接触れられないので)をさすりながら、痛みが一時的におさまった時には少し会話をした。
その次の痛みが一瞬落ち着いた時、入院して初めて患者さんに少し笑顔がみられた。
看護師を7年やってきてこの瞬間、腑に落ちた気がした。
"患者さんが何をしてほしいか"というのはこれまでにも大事なことだと何度も思ってはいたけど
これを考えれば自ずとやるべきことが見えてくるのかもしれない、というところまで腑に落ちたのは今の私だから感じられたのだろう。
そんなことを思った今、例えば急変時の医師への報告を考えてみた。
急変している患者さんを目の前にした時、まずは人を呼ぶ。
("何をしてほしいか"を考えればいいとはいっても、一瞬で、今どうして急変しているのかの原因を考える必要があるため、日々学習していることが前提だけど。)
そこで出てくるのが、患者さんに対してともうひとつ私が緊張する場面、医師への報告。
何をどう言うべきかをいつも頭の中で一瞬で整理して話すのだが、これがなかなか難しい。
こういう内容を話すべきだといわれているマニュアルのような構成はある。
でも、それを言わなければならないと思うとそれでも難しいのだ。
ここで、何をどう話すべきか、ではなく、電話した相手の医師は"何を知りたいか"を考えてみる。
そうすると、
○患者さんの名前と居場所
○何の病気で入院している人か
○今どういう状況か(心拍が停止しているので心臓マッサージをしている、など)
○医師に何をしてほしいか(まず電話越しなら、とにかく来てください、など)
自分マニュアルができた。
(ここで振り返ってみると、結果的には一般に言われている報告の仕方というのも同じようなものだった)
簡単なことだった。
今までは何を言わなければいけないかを考えていたために電話ひとつでも緊張し、不安だった。
今なら、多少の緊張はしても今までより数秒早く医師への電話に手を出すことが出来る気がする。
そうすると、患者さんへの対応がまた数秒、いや、数分早くなるかもしれないのだ。
"今何をすべきか"
より
"相手が今何をしてほしいか"
を考えてみる
私にとって、毎日不安と緊張だらけの仕事に少し自信がもてるようになる一つの大きな気付きだった。
そしてよく考えてみればこれは、普段日常生活で私が大切にしていることでもあったことに気がついた。
もし看護師という仕事を辞めて転職したとしても、例えば、今上司は何をしてほしいか、お客さんは今何をしてほしいかなど考えてみよう、と今思うのでした。