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【感想文】風と共に去りぬ第5巻/マーガレット・ミッチェル

『Scarlett & Butler's Upper Room』

第4部第43章からレット・バトラーの俗人的な性質が現れはじめる。
その様は、恒例である「スカーレットとの口喧嘩」を通して確認することができる。

この場面でレットが語る父親の印象は、

<<父はいわゆる古い伝統にのっとった立派な紳士と、世間からは見なされていました。つまりは無知で、愚鈍で、狭量で、旧弊にとらわれた紳士たちの考えで、それとは異なる角度から物ごとを見ることなどありえませんでした。>>岩波文庫,P.191 としており、さらに、<<「父はじっさいはリー将軍が降伏したときに死にました。そんなタイプの人間をご存じでしょう。新時代に順応できず、古き良き時代を語りながら日々を過ごしていたのです」>>P.194

とあることから、父は、南部の精神に殉死する程に古風で了見の狭い人物だった事が窺え、この点において父と折り合いがつかず勘当されるに至る。
そして、話題がアシュリーへと移るとレットは、

<<私がアシュリーを哀れむのは、死ぬべきだったのに死んでいないからですよ。侮蔑するのは、アシュリーの世界が消え去ったいま、自分自身をどう対処していいのかわかっていないからです」>>P.199 と嫌悪しており、さらに、<<価値観がひっくり返ったとき、アシュリーのような育ちは役立たずのゼロ。世の中が転覆すれば、あのタイプは最初に消えて行く。当然ですよね?かれらは闘わないのですから生き残るに値しない?闘いかたを知らない。--以下略-- 」>>P.204

という発言から、アシュリーを、自己の精神世界に嵌り旧弊にとらわれた父にその姿を重ねていることが分かる。それも相俟って <<そのような人のために私の金を使うつもりはない>>P.203 と言い切ったのであろう。
また、口喧嘩の終盤、レットは、

<<「プライド、名誉、真実、徳、親切心」レットはすらすらと数えあげた。「スカーレット、きみは正しい。舟が沈もうとしているときにそんなものは重要ではない。でも周囲の友人たちを見てごらんなさい。かれらは積み荷の損失もなく舟を安全に上陸させ、さもなくばすべての旗を翻しながら落ちぶれても満足している」>>P.211

とスカーレットの苦悩を代弁しているがそれは、父に勘当された頃の彼自身と彼女の境遇を重ねたからであり、彼女を同志とみなしている。

以上を総合すると、レットは本来、劣等感と孤独感に苛まれた俗人なのではないかと思われ、普段の達観した飄々たる態度とは畢竟、彼の本心に対する防衛本能の表れともいえる。そうしたレットは彼自身、苦痛であるに違いなく、彼を救うことができるのは同志であるスカーレットしか、いない。

いずれにしても、この場面が「風と共に去りぬ」最終巻最終章に絡みつく引き金である、とだけ今は述べるに止めておく。

といったことを考えながら、私はアレクサに『アレクサ、エアコン切って。』と命じたところ、アレクサはエアコンを真っ二つに斬った。

以上

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