【感想文】レ・ミゼラブル/ヴィクトル・ユゴー(第3部:マリユス)
『夏木マリユス』
私は本書『レミゼラブル』を新潮文庫版ではなく岩波文庫版で読んだ。そこで今回は『第三部:マリユス』を例に挙げて岩波文庫版の特徴を説明する。
▼特徴その① ~ 岩波文庫版には挿絵が付いている ~
これこそが最大の特徴であろう、岩波文庫版には約20ページ毎に挿絵が付く。有り難いことである。なぜというに、挿絵が無い場合は都度、文章から画を想像する手間が生じるが、挿絵が入ることでその一手間は省かれるからである。結果、私は約3000ページに渡るこの大長編をノンストレスで読み終えることができた。ここで、岩波文庫版をお持ちでない諸氏の為に、第三部における主要人物がどういった外見なのかお伝えしておく。
・マリユスの外見:
その外見は岩波文庫第2巻,P.576の挿絵を見れば一目瞭然である。で、私が確認した結果、マリユスの外見は「"ベルサイユのばら" のアンドレを刈り上げにしたみたいな顔面」であった。
・テナルディエの外見:
その外見は岩波文庫第3巻,P.123の挿絵を見れば一目瞭然である。で、私が確認した結果、テナルディエの外見は「小林薫の100年後みたいな顔面」であった。
・コゼットの外見:
その外見は岩波文庫第2巻,P.571の挿絵を見れば一目瞭然である。で、私が確認した結果、コゼットの外見は「"アルプスの少女ハイジ" のクララを刈り上げにしてその似顔絵を永井豪が描いたみたいな顔面」であった。
▼特徴その② ~ 岩波文庫版は難解な表記が多い ~
翻訳者、豊島与志雄氏の癖なのかは分からぬが岩波文庫版の筆致は、昨今の常用でない単語、言葉づかいが頻出する。その為、読解が困難である。該当するケースを何点か紹介する。
・読解困難なケース1:
以下に示す引用は、マリユスとコゼットの出会いの描写である。
<<彼女は目を伏せ、彼は逍遥(しょうよう)を続けた。>> 同,第2巻,P.574
現代日本において「逍遥」の意味を即答できる者はいないのではないだろうか。字面からも想像し難い。そして <<彼は逍遥を続けた>> とは一体どういった行為を指すのか。で、私なりに考え抜いた末、「逍遥」とは「坪内逍遥」のことを指すという結論に至った。そう解釈することでこの場面は「マリユスはコゼットの気を惹こうとして坪内逍遥のモノマネをひたすらし続けた描写」と読み解くことができる。蓋し、ひょうきんな男だといえる。
・読解困難なケース2:
以下に示す引用は、テナルディエの長女・エポニーヌがマリユスに向けたセリフである。
<<「五フラン!光ってるわ、王様だわ、このでこの中にね。しめだわ。あなたは親切なねんこだわ。あたしあなたにぞっこんでよ。いいこと、どんたくだわ。― 以下略 ―>> 同,第3巻,P.34
上記において難解なのは <<ねんこ>>、<<ぞっこん>>、<<どんたく>> である。この3点、順を追って説明するとまず「ねんこ」とは、北関東地方の方言で赤子を意味する。次に「ぞっこん」の意味を母に尋ねたところ、最上級の惚れ方だと教えてくれた。「どんたく」は博多どんたくに決まっている。したがって、この一文の意味するところは「赤子のように愛くるしい一方で博多どんたくさながらの男意気に溢れるマリユスにエポニーヌは惚れている、Zokkon!!」となる。
といったことを考えながら、教えてくれた母に私は感謝している。
以上