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【感想文】佐渡/太宰治

『るるぶ佐渡(私家版)』

▼本書のあらすじ

佐渡に行ったけどつまらなかったよ、的な話。

▼読書感想文

台詞がやたら生真面目で面白い。例えば以下。

<<「白米は、おいしいね」白米なのである。>>

新潮文庫『きりぎりす』所収『佐渡』,P208

▼余談 ~ 私の佐渡島旅行 ~

これが自慢になるのかよくわからないが、数年前に私は佐渡島に行ったことがある。
と言うと、知人に「へえ、あんな遠いところまでよく行ったね。で、どうだった?」と聞かれるので「いや、別にこれといって何も……」と答えるしかない。なんでかというと、それは私がそう思ったからなんだけど、本書『佐渡』の語り手の男が、
<<佐渡には何も無い。>>
<<一体なんだろう。つまらぬ島だ。>>
<<死ぬほど淋しいところ>>
<<佐渡は、生活しています。一言にして語ればそれだ。なんの興も無い。>>
とグチっているのと私もほぼ同意見だからである。

私は偏屈極まるゴミ人間なので旅先で観光はあまりしない。旅行の目的は単なる気分転換である。
しかし、新潟の古町を拠点に二日間ほど滞在してそろそろ飽きていたせいもあってか、ふと、「せっかく新潟まで来たんだし明日は佐渡島にでも行ってみるかあ。」と思い立った私は何の気なしに佐渡へ向かった、ジェットフォイルで。この「ジェットフォイル」とは、ジェットという名称からして空でも飛ぶんかいなと思いきや何のことは無い、高速船であった。で、佐渡にはすぐ着いた。両津港の近くにあるそこそこ大きめの食堂に入ったらなんとそこは蟹の味噌汁が無料だった。あの蟹はサイズ的にワタリガニじゃなくてズワイガニだったような気がする。そこの食堂で何の定食を食べたのか忘れたけどとりあえず食べ終えた私はつづいてレンタカーを借りに行った。

が、いつもの大手レンタカー屋が無かったので個人で経営しているレンタカー屋に行った。「オートマよりもマニュアルの方が安いけどどうします?」なんとこのレンタカー屋にはマニュアル車が置いてあったのである。「じゃあ、マニュアルで。」と久々にマニュアル車を運転して佐渡島を一周したら合計五回ほどエンストした。なぜかというと、このマニュアル車はクラッチの「あそび」がほとんど無く、そのため発進とギアチェンジの際にすんごいシビアな足操作を要求されるからである。あの車で二速発進できる者はいないのではないか。で、島の様子は本書を参照すればいいから割愛しますけど、強いて言うなら佐渡は「箱庭」みたいな島だった。

帰りの船はジェットフォイルではなく普通の船に乗った。本書『佐渡』では、二等船室で男が毛布にくるまって寝ころんだ云々……的な描写があるが、一方の私は毛布ではなく新聞紙にくるまって寝ころんだ。もともと毛布が置いてあったであろう棚には毛布の代わりに古新聞が大量に積まれており、生まれて初めて新聞紙に頭までくるまって目を閉じてみたけど、なんていうか、大量の文字の気配をまぶたの向こうで感じたのか、なんかもう一睡もできなかった。

私にとっての佐渡は「蟹汁が無料でマニュアル車を運転できて新聞紙で寝ることができる箱庭みたいな島」ってことになっている。

といったことを考えながら、過去をたどればこうした新潟旅行の記憶が甦ってきたのでお伝えした次第である。

以上

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