見出し画像

【感想文】赤ひげ診療譚/山本周五郎

『落語モンドセレクション最高金賞受賞メモリアル読書感想文』

本書『赤ひげ診療譚』は作中、様々な境遇の患者が養生所ようじょうしょを訪れるのだが、そうした病気の根本原因は「赤ひげ」によると <<貧困と無知と不自然な環境>> であるとし、彼は嘆きつつも医者としての我が使命を果たすべく……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!すっかり忘れてた!!そういえば昨日、僕は長年に渡る落語の研究成果が認められ、この度「落語モンドセレクション最高金賞」を受賞したんだった!

というわけで今回は以下、落語モンドセレクションとしての我が使命を果たす。

▼狂女の話:
おゆみの狂気、それはさながら怪談『牡丹灯籠ぼたんどうろう』の「お札はがし」の段において「おつゆ」が恋仲の男の首にかじりついて殺害する狂気に、さも似たり。

▼駆込み訴え:
「おくに」は奉行から「妻でありながら夫を訴えるなんてアカン」という理由で牢獄に入れられてしまうが、こうした奉行の滅茶苦茶な判決は落語にもよくあって、例えば『天狗裁き』という噺に登場する奉行は「夢の内容を教えてくれないから」という理由で男を処罰する。

▼むじな長屋:
匕首で自害した「おなか」の覚悟、それはさながら怪談『真景累ヶ淵しんけいかさねがふち』における「おるい」が草刈り鎌で喉を裂いて自害する覚悟に、さも似たり。

▼三度目の正直:
いわゆる「オクテ」な男が登場する。こうした与太話は落語にも大量にあり、有名なのは『明烏あけがらす』だが私としては『崇徳院すうとくいん』をお勧めしたい。で、噺のサゲは百人一首の「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」という和歌が用いられるのだが、このサゲの地口は初見だと意味不明である。

徒労とろうに賭ける:
子供ながら女郎屋に身を置く「おとよ」の不遇、それはさながら『文七元結ぶんしちもっとい』における「お久」の不遇に、さも似たり。

うぐいすばか:
「鶯ばか」と呼ばれて変人扱いされている男が登場する。同様に落語では『胴乱どうらんの幸助』とか『鉄砲勇助』なんかがあるけど、私としては『天神山』に登場する「ヘンチキの源助」を挙げたい。彼は花見へ行こうとして、オマルに弁当を詰め込んでシビンに酒を入れ、そして花見ではなく「墓見」と称して墓場へ行った挙句、オマル弁当とシビン酒で宴会をする。

▼おくめ殺し:
昔から「大家といえば親同然、店子といえば子も同然」とはいえ、この物語のように店子が大家に刃向かうことだってある。それは落語にだってある。例えば『大工調べ』という噺では、非人情な大家に対して店子の大工が啖呵をきる。つまり「てめえッちに頭ァ下げるようなおあにいさんとおあにいさんのできが少ゥしばかり違うんでィ!」と。なお、この文句がスラスラ言えたなら江戸っ子を名乗ってよい。あと、古今亭志ん朝の『大工調べ』は絶品である。

▼氷の下の目:
白痴の娘「おえい」は、『塩原多助一代記しおばらたすけいちだいき』に登場する塩原角右衛門の後妻の連れ子「おえい」と名前が同じだよ!

といったことを考えながら、使命を果たしてホッとしていると「こじつけ御苦労さん……」という三遊亭百生さんゆていひゃくしょうの声が聞こえてきた。

以上

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集