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くたびれた傘に思うこと

雨のある日、
革靴にスーツを着て、黒い雨傘をさし、ランチ休憩帰りなのか急ぎ足で通りすぎる男性を見た。

思わずその男性のさしている傘に、目が釘付けになった。

『くたびれた』とは、まさにこのこと!
『しょぼくれた』という表現もよい。

その傘は、無抵抗にまったく雨を弾くことなくただただ、雨を垂れ流していた。

傘として雨を防ぐことはできているので、中にいるその男性は気にしていないかもしれないが、外から見たその様子は、どこかだらしがなく、みすぼらしくさえ私の目には映った。

どんなに、その男性がイケメンでいいスーツを着ていたとしても同じことを思ったであろう。

その男性はただそういうことに無頓着なのかもしれないし、節約家なのかもしれないし、気になってはいるけど、いい傘との出会いを待っているだけなのかもしれない。


確かに傘としての役目は果たしている。
捨てることなく、飽きることなく、長年使うのは、良いことかもしれない。


でも。。。


機能していれば、それでいいのだろうか。
役割を果たしていれば、それでいいのだろうか。

「身だしなみなんていいじゃん、やることやってんだから。」

「私、ズタボロになっても働き続けます。」

「若い時は、かっこよかったんだぜ、俺
も。肌も水なんか弾いちゃってさぁ〜」

「使い捨てのヤツらよりマシだ。」

傘と人間達のセリフが重なる。。。




家に戻って、私は自分の傘の手入れをした。

以前、マツコの知らない世界で見た傘オタクさんの手入れ方法を思い出しながら、時々やっている。

その日は、念入りに手入れを行った。

よく見ると傘布と骨を繋ぎ止める糸が一箇所切れていたので、糸と針で結び直した。

布に少しサビが移っている箇所もあった。
毎回使う度に、乾かしているけど、十分でないのだろう。

こういうことは、『雨を防ぐ』という目的だけだと、目に入って来ない。

一面ずつ、ドライヤーの温風で表と裏を温めた。
※撥水加工が復活しますので、おためしアレ。

ダメになったものでも手入れすれば息を吹き返すこともあり、手入れをしてもダメな時は、お別れの時で新しい出会いを探す時なのかもしれない。


荷物をなるべく避けたい若い頃の私は、雨が降ればコンビニでビニール傘を買えばいいや。という軽い感じで、雨が止めばどこかに置いて帰ったり、会社のロッカーや家の傘入れにもビニール傘がいくつもありました。

オーストラリアに移り住んでからは、車移動ばかりで、傘をさすことが無かったので持っておらず、コンビニもなければ、ビニール傘も売ってない。ちょっとぐらい濡れても気にしない。
日焼けも気にしない。

そんな日本に帰ってきたある夏、友人がさっと日除けに差し出してくれた麻布の日傘がとっても素敵で、ワオッ!ジャパン!ビューティフル!と感心したものです。

日傘まではまだ意識が高まってませんが、ちょっと高くても、素敵な雨傘を大切に使いたいなとその時に思いました。

そうして観察をしていくと、素敵な傘の持ち主に限って、凛とした佇まいの素敵な方が多い!

ただ、素敵な傘であればあるほど、重たい(特に日傘)。
重たければ、持っていきたくない。
これが荷物嫌いの私の目下の悩みです。

環境にうるさい国に移住してエコ意識がそこそこ身についた私は、あれからビニール傘を一度も買っていません。
私という人間はきっと、ビニール傘を買っても大事にしないだろうからというのもあります。

気に入った物を持っていると気分が良い。
素敵な物を大切に使いたい。


くたびれた傘をさす男性を見て、
物を大切にした方がよいという気持ちと同時に、ダメになったものをまぁいっかと見過ごして、ダメなまま使い続ける堕落した自分ではいたくないと思い、人の振り見て我が振り直せ。
急いで傘の手入れをした、そんな雨の日のお話でした。

皆さんは、何を思うだろうか。


たまひろ




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