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笑いのカイブツ
”伝説のハガキ職人”と呼ばれていた「ツチヤタカユキ」という人物はご存知だろうか?きっとほとんどの人が知らないのではと思う。私も本作を観るまで知らなかった。
でも、エンドロールが流れる頃にはツチヤの生き方に惹かれていた。少なくとも仕事のストレスに押し潰されそうになりながら生きている今の自分にはとても魅力的に映った。ちなみに一緒に観た妻は「自己中な世界観を持っている人だね」と言っていた。
「やりたいこと」がない自分から見ると熱中できるものがある人は羨ましく映るが、当然楽しいことだけじゃないし誰でも仕事なら辛いことの方が多い。やりたいことをやるためにやりたくないことをやらなければいけないこともまた事実。特に最初は。
1、得意なことが見つかって得意なことを仕事にできている
2、得意なことが見つかっているが得意なことは仕事にできていない
3、得意なことが見つかっていない
色々な人がいるが大体の人は2か3ではないだろうか。
私の得意なことはなんだろうか。誰か教えてくれるんだろうか。今のところ完全に混じり気のない3でしかない。でも、1の人は「仕事が楽」かと言うと決してそうではないし、そもそも楽な仕事というものはない。ないけれど、楽しむか楽しまないかって部分は自分自身の範疇で決められるのかな。今の自分にはそんな自信すらないけど。
普段は営業の仕事をしている。
営業はモノを売ることが仕事なので、売らずに社内でパソコンをパチパチやってる人間は何をしているんだ?と思うことがある。資料を整理している云々と色々言う奴がいるが、営業ならモノを売ってなんぼでしょう。やっぱり売って帰って来れる奴が一番偉いと思う。そこに現場に出てモノを売っているワケでもない人間にあーだこーだと言われても響かない。「じゃあ、お前は売れるのか?」と思う。
佐藤さんとツチヤの会話が噛み合わないのは、佐藤さんが芸人でもなければネタを書いているわけでもない。それなのに、ツチヤに対して佐藤さんは「経験不足」などとコメントしてくる。それに周囲の人間も同意している。なぜネタを書いている自分が「お笑いの素人」に批評されなければならないのかが全くわからない。
そして、その怒りを何にぶつけていいのか、誰にぶつけていいのかもわからない。色々重なって酒に逃げてしまう気持ちもわかる気がした。ヤクザに啖呵を切る気持ちだけはわからないけど。
社会にいると自分が従来持っていた「尖り」を削り取られているような気がしてならない。おれってこんなに丸かったっけ。もっと鼻息の荒い男じゃなかったっけ。いつからこんな男になってしまったんだっけ。もっと何かに没頭していなかったっけ。
やっぱりおれはツチヤさんの生き方に惹かれる。
なんか書いていたらブルーになってきたので切り上げます。
ツチヤさんの映画は最高でした。知ることができてよかった。