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多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミが発行しているウェブマガジンです。芸術関連のニュース、展覧会評、書評、美術館探訪記、美術家のインタビューなどアートにかかわる様々な記事…
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2025年1月の記事一覧

自然光のみで照らされた大竹利絵子の彫刻の魅力

 2024年度の多摩美術大学展覧会設計ゼミ(家村ゼミ)は、多摩美術大学八王子キャンパスのアートテークギャラリーで、昨年10月、家村ゼミ展2024「自然光だけで大竹利絵子の彫刻を置く」を開催した。この展示は、2023年開催の「自然光だけで日高理恵子の絵画を置く」に続く「自然光シリーズ」の一環であり、立体作品を用いた挑戦だった。家村ゼミだからこそ実現できた展覧会の「余白」に着目して、本展示を読み解いた。  大竹利絵子の彫刻作品は見る距離によって印象が大きく異なる。多くが青年をか

人々のリアルが投影された「フィクションドキュメンタリー」

川尻将由(アニメーション監督)インタビュー  アニメーション監督の川尻将由氏は、一つの作品の中で登場するキャラクターの描き方を、時期や年齢によってがらりと変える。同じ人物なのに落書きのようだったり、おしゃれなイラストといったテイストで描かれたりするのだ。その変化は、まさに人間の成長を表しているようでもある。はたしてその表現には、どんな真意があるのだろうか。  川尻将由氏のアニメーション作品で特徴的なのは、登場するキャラクターの成長や境遇や変化を、デフォルメのありようやタ

SNS時代にゴッホの「本物を見る」幸せ

 InstagramやYouTubeなどのSNSの普及によって世界は驚くほど身近に感じられるようになった。Instagramは世界中の映えスポットにあふれ、YouTubeで検索すれば気になる場所の旅行Vlog(Video Blog)やその土地に住む人の暮らしを簡単に覗くことができる。そんな現代を生きる友人がある時、「動画で見たからわざわざ旅行しなくてもいいかな」という言葉をつぶやくのを聞いた。「えっ? それはどうなの?」という疑問が湧いた。旅先で美術作品を見て、まったく違う体

40年以上続く「ビックリマン」シール制作秘話 ~イラストを手がける二人のクリエイターに聞く~

 ロッテの チョコレート菓子のおまけとして1977年に登場した「ビックリマン」シール。特に85年に「悪魔VS天使」シリーズが始まってからは、オリジナルのデザインとストーリー性が多くのファンの心をつかみ、40年近く経った現在でも36作目が出るなどして大きな人気を維持している。そのパワーをもって、「ビックリマン」はピーク時には年間4億個以上を売り上げたという。現代でも愛され続けるキャラクターはいかにして誕生したのか。イラスト制作を担う二人のクリエイターに聞いた。  「ビックリマ

「不在」が「存在」に変わるとき〜ロートレックとソフィ・カル@三菱一号館美術館

昨年から行く予定にしていた三菱一号館美術館再開館記念の「不在」と題された企画展に、年が明けてようやく行くことができた。サブタイトルは、「トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」。なんとも不思議な組み合わせである。どちらもフランスの美術家とはいえ、時代も表現の形態も大きく異なる2人を同時に取り上げているからだ。しかも、ソフィ・カルは1953年生まれの現存の美術家である。これまで印象派等美術史上の画家の作品を取り上げることが多かった同館が現代の作家を取り上げたのは、初めてという