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第2章 会社の「安全性」を見るポイント
4.「固定比率」は資産の中身が大切!
低いほど良い「固定比率」
会社の固定資産投資に無理がないかどうかは、「固定資産」と「純資産」(自己資本)の金額を比較する「固定比率」をチェックします。
固定資産は1年を超えて長期に利用される資産であり、貸借対照表では「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに区分して表示されます。
これらの固定資産へ投資した資金は長期間回収できないため、固定資金の運用と調達のバランスが悪いと長期的な資金繰りに悪影響を与えます。
「有形固定資産」は、土地・建物・機械装置などの事業活動に使用している資産であり、「無形固定資産」は特許権や借地権などの事業活動に必要とされる形のない資産です。
有形固定資産も無形固定資産も、すべての資産が収益獲得に貢献し、事業に必要とされる資産であるかどうかが大切なポイントです。
「投資その他の資産」は、投資目的で保有している投資有価証券、関係会社株式、保険積立金、回収期限が1年を超える長期貸付金などであり、帳簿価額よりも実際の価値が下がっていないか注意しておきます。
「純資産」とは元手と儲けの蓄積であり、返済不要の会社(自分)のお金であるため、経営分析などにおいて「自己資本」ともいいます。
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本来、固定資産投資は返済不要の自己資本の範囲内で行うべきです。
貸借対照表の左右のバランスでいうと、固定資産が自己資本よりも小さいことが理想です。 固定資産が自己資本よりも小さければ、固定資産への投資が自己資本の範囲内で行われているということです。
このような会社は固定資産よりも自己資本のほうが大きく、その余剰額を経常的な経営活動で必要となる日々の運転資金へ充てることができます。
長期的にも、短期的にも、資金繰り状況が健全であるといえます。
固定比率(=固定資産÷自己資本)は、固定資産を自己資本で割った指標なので、固定資産への投資が自己資本の範囲内で行われているならば固定比率は100%以下となります。基本的に、固定比率は低いほど良い指標です。
1年だけでは評価できない「固定比率」
ただ、設備投資の効果はすぐには現れるものではないため、1事業年度の固定比率だけで判断せず、数年間の推移を見ることが大切です。
設立間もない会社などでは、資本金も利益剰余金も少額であるため自己資本の額が厚くなく、自己資本を超える設備投資を行うことも多いものです。そのような会社は、当然ながら、固定比率は100%を超過してしまいます。単年度だけの固定比率の計算結果だけで危ない会社と決め付けるのでなく、少なくとも設備投資後3年程度の固定比率の推移を見ます。
当初は取得価額で計上される固定資産も、その後の減価償却費の計上により帳簿価額が下がると同時に、省力化投資の効果により利益を計上できれば自己資本の額が増加します。
設備投資の意思決定が正しければ固定比率は改善していくはずですから、単年度だけではなく数年間の推移を見ましょう。
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また、自己資本の範囲内での設備投資とは現状に安住することでもあり、縮小均衡のままで将来の発展は望めません。
会社の成長と発展のため、「勝負に出るときは出る!」という心意気で、自己資本を超えた積極投資を試みる決断も要求されます。
油断できない固定比率の高さ
しかし、固定比率が100%を超えている会社の固定資産に繰延税金資産、長期貸付金、破産更生債権等、長期前払費用などの「投資その他の資産」が多額に計上されており、かつ、機械装置などの有形固定資産が極端に少ない場合は、長期的なお金の使い方の中身を注意して見る必要があります。
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