見出し画像

第6章 「生産性」の高い会社であり続けるために


1.「付加価値」で企業の存在価値を計る 



国の経済力も「付加価値」で計られる


 会社が市場で受け入れられ、永続的に存続発展するためには「付加価値」の提供が求められます。 
 付加価値とは会社が新たに生み出した価値であり、売上高から外部購入価値を控除した純生産額をいいます。価値を創造できる力がある会社こそが、市場に受け入れられている強い会社であるといえます。

 国内において事業者が新たに生み出した付加価値額の総額が、「国内総生産」(GDP、Gross Domestic Product)を構成しますので、国の経済規模と国民の豊かさを考えるうえでも付加価値はとても大切な要素です。 

 経営分析において、会社が創造する価値を把握するためには、「売上高」から「外部購入価値」を差し引いて「付加価値額」を計算します。
 売上高とは、お客さまが製品やサービスに価値を認めて支払う対価です。外部購入価値とは、売上原価、材料費、外注加工費、運賃などの外部に支払った金額をいいます。
 たとえば会社が、外部から仕入れた原価100円の商品を売価150円で顧客に販売したならば、その商品に、会社は50円の価値を付加したと考えます。

 つまり付加価値とは、会社が素材などにえた価値であり、付加価値額の大きさは会社の存続価値を評価する重要な要素なのです。
 同じ素材であっても高く売る力のある会社もあれば、安い値段で叩き売りしかできない会社もあります。素材自体が持つ価値だけでなく、会社がどのような価値を付加して売上高を維持できるかにかかっています。

 他社で手に入らない製品、行列を作って並んででも買いたい製品、生活を便利にする製品やサービス、手に入れることで満足感のある製品であれば、売上高は伸びます。このような価値のある製品であれば、価格面でも差別化できます。価格面での差別化とは、値段に対して自分の主張が通るということですので、結果として、高い付加価値額を確保できることになります。


付加価値は企業の存在価値を計るうえで大切です!



 付加価値額の高さは、顧客が期待する「価値を付加する力」と「適正な値段を通す力」の2つに左右されるわけです。


「付加価値額」の2つの計算方法


 付加価値額の計算方法には、売上高から外部購入価値を控除することで計算する「控除法」と、付加価値額を生み出すために必要なコストを合計して利益に積み上げていく「積上法」の2つがあります。

 控除法と積上法を比較してみると、外部支払額か、会社が付加した価値なのかあいまいな部分について、差額が生じることがわかります。たとえば、水道光熱費や通信費、旅費交通費などは、控除法では付加価値額に含まれますが、積上法では利益に加算しませんので付加価値額から除かれます。

 各種統計資料などでは、利益に付加価値の構成要素を加算する「積上法」が多く見受けられます。積上法であれば、外部から財務諸表を分析する場合にも、製造原価報告書や損益計算書に表示されている数字を基に付加価値額を計算できるためです。
 また、積上法でのスタートとなる利益は当期純利益や営業利益、経常利益などさまざまですし、減価償却費や賃借料を付加価値額に算入する方法と算入しない方法があります。

 一方、控除法によれば、お客さまが支払った商品代金から、仕入原価や材料費、外注加工費、運賃などの外部購入価値を差し引いた金額を付加価値額と捉えます。

実務的には控除法で付加価値額を計算しよう!


 付加価値額を同じ土俵で比較するためには、統計資料の経営指標などが、どちらの方法により付加価値額を計算しているか確認する必要があります。いずれの計算方法も理論的には正しい主張を持っているのですが、ここでは実務的な方法として、控除法により付加価値額を捉えていきます。

 付加価値額=売上高-外部購入価値(材料費、外注加工費など)

 

卸売業・小売業では付加価値額≒売上総利益


 控除法では、卸売業、小売業の場合には、売上高から、外部購入価値である売上原価を差し引いて、付加価値額を求めます。売上原価のほかに運賃や販売手数料などの外部支払高がある場合には、それらの金額も控除します。  
 売上原価のほかに外部購入価値がない卸売業、小売業では、結果として、付加価値額は、売上総利益の額と等しいものになります。

 製造業における付加価値額は、当期の売上高から、当期の売上高に対応する外部購入価値、つまり売上原価に含まれる材料費、外注加工費および運賃など会社が生み出した価値ではない外部購入価値を控除して計算します。

 製造業の付加価値額の捉え方は、次回、詳しく見ていきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?