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第3章 「収益力」の高さはここに表れる


2.「売上総利益」は利益の大本!



商品力の高さは「売上総利益」に表れる

 「売上総利益」は、売上高から売上原価を差し引くことで計算する「利益の大本」です。 
 売上総利益は、さまざまな諸経費を差し引く前のっぽい利益でもあり、通称として、「粗利(あらり)」とも呼ばれています。
 売上総利益の金額の大きさと、売上総利益率(=売上総利益÷売上高)の高さから、製品やサービスの力を判断できます。売上総利益率は「粗利率」ともいいます。
 取扱製品や商品、サービスの質が良く、人気が高ければライバルである同業他社よりも高い粗利率を確保できるはずです。他社とは差別化した製品、付加価値の高い製品、並んでも買いたい商品を取り扱う会社、他社では受けられないサービスを提供する会社は粗利率が高くなります。

売上総利益(粗利益)は利益の大本!


 ただし製品の性質により、粗利率の高い業界もあれば、粗利率の低い業界もあります。
 一般的に、日用消耗品のように毎日よく売れる商品は粗利率が低くなり、嗜好品やブランド品、耐久消費財のように消費者の購入頻度が低い商品は粗利率が高くなります。
 そのほかにも業種における特徴もあるため、売上総利益率は、同業他社、ライバル社と比較しましょう。
 たとえば、化粧品関連事業を行う会社の売上総利益率は次のとおりです。

売上総利益率が高い化粧品業界


 各社ともに売上総利益率は高い(売上原価率は低い)ことが分かります。  
 しかしながら、化粧品業界では広告宣伝費や販売促進費、美容部員さんの給料手当などの負担が大きいため、利益の大本である売上総利益を確保しておかないと営業利益を残せません。 
 たとえば、コーセーの広告宣伝費と販売促進費の合計額は699億円(対売上比率24.2%)、ポーラオルビスの販売手数料・広告宣伝費・販売促進費の合計額は571億円(対売上比率34.4%)と報告されています。
 このように、製品の魅力を消費者に訴求するために派手な宣伝活動を行いショップの販売員が大活躍する業界では、広告宣伝費なども売上を得るための直接経費として捉えたうえで利益率を見る必要があります。


「商品力」の高い会社であるために

 売上総利益を高めるには、売上高の増大売上原価の低減の両面での努力が必要です。
 売上高は「価格」と「数量」に分解できますから、値引きをしないで売る営業姿勢と、顧客数を増やすことの両面で考えます。

 価格を下げないために、値引き決裁ルールを厳格にすることで営業担当者の安易な値引き受注を防ぎます。魅力ある商品について適正な値段を通せることも企業力といえます。
 また、数日後に購入すれば半値になるのであれば、お客さまも特売日まで買い控えてしまいます。商品の値段が頻繁に変わる会社には信頼感が持てませんし、一度下げてしまった売り値を元に戻すことは困難です。購入側は「不公平感」を嫌いますので、販売側として公平感を保つためには、売り値は明確に一本化しておきます。そのうえで、購入頻度の高い上得意先に対しては、販促活動の一環として売上割戻しを支払います。
 明確かつ慎重な価格戦略に基づいた合理的な得意先管理が求められます。
 また、取引開始時の与信管理から入金管理まで営業活動のステップ管理をしっかりと行うことで売上代金を早くかつ確実に回収することも大切です。

 顧客数を増やすためには、新規販売ルートの開拓、得意先の維持と深耕のそれぞれに力を入れ、新規開拓とともにリピート客の確保を心掛けます。
 顧客から、「もう一度、あの店で買いたい」あるいは「もう一度、あの会社と取引したい」と思ってもらえるかが大切です。
 反対に、「もう二度と、あの店では買いたくない」とか「もう二度と、あの会社とは商売したくない」と感じた顧客は去っていきます。
 「もう一度」と「もう二度と」の違いは大きいですね。

 売上原価を低減させる着眼点は、仕入にかかる付随費用の引き下げなどで1個当たりの仕入価格や材料費の引き下げと、在庫のロスを防ぐことです。 
 製造業では、内製と外注との比較検討、工場レイアウトを見直してムダな動きをなくす、工場諸経費の節約など、着手できるところから始めます。


売上高=価格(P)×数量(Q)





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