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大好きの、ぎゅ〜。

「残しておきたい、あなたと家族の物語。」
暮しの手帖に、家庭学校という素敵なコーナーがある。

そこへ応募する気持ちで、書いてみた。

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わが家には、夜寝る前に毎晩かかさない習慣がある。

「大好きのぎゅ〜。いつもありがとう。」と、子どもたちに言い、抱きしめてからお布団に入るというものだ。
ポイントは、「ぎゅ〜」と言いながら子どもたちを抱きしめるところ。
ここを大切にしているのには、もちろん理由がある。

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もう、10年以上も前だ。
それでも、はっきりと覚えている。
母からの「ぎゅ〜」

大学の卒業式が終わり、アパートに戻って着替えてから、さあいよいよ荷物と一緒に実家へ帰ろうという時だった。

「4年間お疲れさま。がんばったね。」の言葉と共に、母が「ぎゅ〜」と抱きしめてくれた。
自分よりも10センチ以上小さな母。
力強く優しい、大きくてあたたかな愛情が伝わってきた。
そして、ひとつの節目を静かに祝ってくれた。

幼いころ、最後に抱きしめてもらったのはいつだったか。
覚えていようなどと意識もしていないのだから、当然ながら記憶には残っていない。
しかし22歳のあの日は、そうではない。
その当時の気持ちも感覚も、すべてを鮮明に思い出すことができる。
いつかのために、覚えていようと心に決めていたのだから。

そして、「母親」という存在だけが持つ特別な力を、この時ほど実感したことはない。
多くを語らずとも伝わってくる安心感と、染み渡る心地よさ、というのだろうか。

✳︎

時は戻って、現在。

わたしはこの母親の持つ特別な力を、わが子に惜しみなく使うと決めて、実践中なわけだ。

大人も子どもも、生きているのだ。
毎日、いいことばかりは続かない。
けれど、この「ぎゅ〜」の瞬間だけは、全てを無に返して安心して欲しいと願っている。
人のあたたかさに、幸せを感じてほしいと思っている。

そして、「大好きのぎゅ〜」は、わたしが母から受け継いだ愛情の伝えかたでもある。
我が母秘伝の愛情伝達術。
呼び方はともかく、これを母から受け継いだからには、と最終目標を立てた。
それは、次の世代に受け継がれるほど色濃く心に刻むこと、である。

最近子どもたちが、「大好きのぎゅ〜。いつもありがとうございます。」と返してくれるようになった。

なんて神聖なひとときだろう、と思う。
あたたかく、ありがたい気持ちになる。

そして、平和はこうやって作られていくのだろうと想像したりする。

すべての人の心からの幸せを願いながら、今日もわが子を抱きしめる。

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