石巻工房:Made in Localなデザイン
武蔵野美術大学大学院 クリエイティブリーダーシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第11回目 2020/07/27
芦沢啓治建築設計事務所代表 芦沢啓治さんにお話を伺う。
建築家として活動を始められ、今では建築やインテリアだけに留まらず、家具やプロダクトのデザインまで手掛けられており、国内外でご活躍されている。そして、2011年の東日本大震災を機に、石巻工房設立を設立される。
自分の街を楽しくするために、近所に自分がデザインした場所をたくさん作っていると序盤におっしゃるような、建築家の視野と行動力にまず驚いた。
石巻工房
今日の講義の内容は主に「石巻工房」の変遷と活動についてだった。
2011年 震災後のボランティアの取り組みから、「石巻工房」は始まる。
震災後何かできることはないかと、現地に駆けつけた芦沢さんはある光景目にして閃いたそう。
復興作業がなかなか進まない中で、被災地のある居酒屋さんは自力で修理をはじめ、どこよりも早く営業を再開し、地元の人や国内外からのボランティアの人たちで賑わう店になっていたそうだ。
その様子をみて、地元の方が自分たち自身でできることは、以外に結構あるのかもしれないと気がつき、そのDIY的活動を後押しするための場所として、地域のお店の人たちが自分たちで利用できる共同の工房を作ろうということで、「石巻工房」を設立された。
元々は復興のボランティアで、復興支援金など、様々な人たちが協力が集まった。
しかし、この活動を何年も続ける上でボランティアでは立ち行かない。
場所の賃料だって持ち出しのままだと続かないし、今後の継続を考えた時にやはりビジネスとして成立させられなければならないと、ビジネスへ転換
この際、ボランティアだからやっていると仲違いしてしまった人たちもいたそう。
家具にしても、何年も使える良いものを作る責任があるし、買ってもらって終了ではない、メンテナンスなどで関わっていく必要があるという、考えからも、工房が自律継続していける仕組みが必要だということで、経済の枠で勝負できるようなブランドとプロダクトにするため注力されたそうだ。
石巻工房で製作されたAスツールなどシンプルな美しさがフランスでデザインが気に入られる。
そしてこれまでのストーリーを話したら、より興味を持ってもらえたそうだ。
そのような流れで、世界各地に共感を得られ、活動が展開された。
Made in Local Project
世界各地から声を掛けられ、ドイツのプロジェクトの際に、
わざわざ自分たちが作ったものを売って輸出するのは、どうなんだろうか
DIY誰でもできるデザインをベースの発想だったこともあり、スタイルを変更。
ドイツではデザインのロイヤリティ契約で、ドイツでのみ自作販売を許可
という形で現地のデザイナーが製作するというスタイルになった。
そこからMade in Local Project が始まる。
→ 現地で手に入る材料で、現地で作り、現地で販売する。
それぞれのアイディアで表現
ボホール島では地元の大工さんと協力して、その場所のやり方でできることをベースに製作したり、素材の性質強度によってデザインを変えることも
石巻でデザインされたサイズをそれぞれの海外のローカルで求められるサイズに変更したり、各地に広がっていく家庭で、その場に適応する形でデザインパターンが派生していくこともMade in Localの面白いところだ。
Made in Local Projectで大切にしていることは、
地域に応じた文化があるので、ローカルらしさを出すために
地元のデザイナーを雇うそうだ。
そうすると現地のデザイナーを通じて自ずと現地色が出てくる。
石巻工房のブランド
あらゆるブランドのストーリーには、今まで歩んできた道のりが語られる。石巻工房においては、震災のあと生まれた事実としての道のりがブランドである。
ブランドがストーリーを語り続けることはとても必要で、
震災の記憶が、石巻工房のブランドを通じて残っていく
そんな長く伝えていくブランドになれば良いと思っているとお話された。
思ったこと:自作家具DIYが普通の選択肢になっていく
これからの人の暮らしや、残っていくものについて、見据えている未来のスパンが壮大で、素晴らしいお話だと思った。
遠くの国で大量生産された家具を輸入して、消費していく、
そんなスタイルの限界を感じるこれからの社会で、
地元の素材で、地元の人たちが自分で作る。
家具の地産地消のような動きがこれからより進んでいくのかもしれない。