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空想お散歩紀行 倍速の街

いろいろな世界を旅していると、どこにも一つとして同じ世界など存在しないことに、改めて気づかされる。
今回私が訪れた世界では、全てが倍速に動いていた。
時間が倍で動いていたわけではない。私が持っている時計は、今までと変わらないスピードで針が進んでいる。
この世界の人々が自分でスピードを上げているのだ。
皆が皆そうしているから、それが普通に見えているようだが、ここに初めて来た私から見たら明らかに異常だった。
全員が速足で歩き、食事もさっさと済ませ、手にした端末から流れる映像や音楽も倍速で視聴している。
それを見越してか、あらかじめ倍速で作られたコンテンツも、さらに倍速にしている人々。
その様は、まるで何かに置いていかれることを怖がっているかのようだ。
必死についていこうとしているようだが、何についていこうとしているのか、それは分からないように見える。
案の定、道のあちこちに足をつって動けなくなっている人が何人もいた。
だけど、彼らはなぜ自分が動けなくなっているのか皆目見当がつかないといった顔をしていた。
観察する分にはおもしろかったが、すぐに私は興味を無くした。
別にこの世界の人々は、倍速で生きたくて生きているわけではないと分かってしまったからだ。
さて、次はどんな世界が私を迎えてくれるのだろう。

https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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