空想お散歩紀行 戦争特化生物、神の苦悩
世界を作るというのは並大抵のことではない。
今ある世界が出来上がるまでに実は何度もトライ&エラーを繰り返しているのだ。その周期が何万年という膨大な時間なので、だれもそのことに気付いていないだけなのだ。
それをもはや数えることができないほどの時間と回数を繰り返し行ってきたのが、いわゆる神と呼ばれる存在だ。
「うーーむ」
その神でさえ、時に行き詰ることもある。
その悩みの原因は神自身が作り出した人間と言う生き物のことである。
何度やってもこの人間が互いに争うことをやめないのである。
一度、完全に争いをやらないよう人間を設計したこともあったが、そうなるとそうなったで、人間は競争することすらせず、遂には他人に興味すら抱かなくなって、ただ滅びていっただけの時もあった。
世界を成長させ維持させるには互いを意識させることは必須条件なのだが、このさじ加減が何度やっても分からない。
試しに神が今やっていることは、世界から採れる資源を制限してみることだ。
鉄などの鉱物をほとんど無くし、武器を作れなくしたらどうかという試みである。
武器があるから争いが加速してしまうと考えたわけだ。
結果として、剣や槍、銃やミサイルといった武器の発展は抑止できたが、戦そのものが無くなったわけではなかった。
人間たちが持つ最大の武器は輪ゴムになった。
その世界の人間たちは互いにゴム鉄砲で戦っていた。
神が以前に作った世界では、子供が遊ぶようなおもちゃだったが、この世界ではそれが主力武器だった。
神は当初、これならそこまで酷い争いになることはないと思っていた。
だが、それは儚くも崩れ去る。
ゴム鉄砲の進化がとてつもなく進んだのだ。
より大きく強力なゴムを、より遠くまで、より連射できるように。より小型化し、より大型化し、果てには大陸間を越えて飛ぶ輪ゴムまで開発されるに至る。
「えぇ、嘘だろ・・・」
正直、神でさえ引いたのである。人はどのようなルートを辿っても、どこまでも争うようになってしまうのか。
「また、一から設計し直しだな」
頭をかきながらぼやく神の苦悩は続く。
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