空想お散歩紀行 地球の空に
自由とは自分自身を縛るものがないことだと思われがちだ。それは当たっているようで外れている。
俺は今、行こうと思えばどこへでも行ける。
だが、どこへ行こうとも決して自由ではない。心が常に縛られているからだ。決して望む場所には行くことができないと、既にあきらめてしまっているからだ。
だが、諦めていない男がいた。
そいつは、ここで共に20年過ごした仲だ。
この地球と呼ばれる世界で。
ここでは俺たちは半分死んでいるも同然だ。
俺たちの元いた世界では当たり前のことがこの地球ではできない。
この世界の人間に魔法とか超能力とか呼ばれてありえない非現実のものとして扱われているような力を俺たちの世界では日常的に使っていた。
原因はこの世界には極端にマナが少ないのだ。
だからこそ俺たちには意味があった。
異世界送り。俺たちの世界で罪を犯した者に与えられるある意味死刑よりも重い罰。
ほとんど力が使えない世界に送られる。それは耐えがたい苦痛だ。牢獄という物は存在しない。なぜならこの世界そのものが俺たちにとって牢獄だからだ。
自由に移動できても、怖くてしかたがない。
俺たちの世界では5歳の子供でもできるようなことがここではできないからだ。
最初ここに送られたとき、なんで世界が成り立っているのかまったく分からなかった。
さて、俺とその友人、ロディにはある特徴があった。。
それは無実という名前の罪で異世界送りにされたということだ。
何も悪いことをしていないのに、この最悪の世界へ送られる。酷い話だ。
どういうわけか俺たちは気が合って、共に行動をし続けた。
仮釈放も認められないまま年月が経ち、この地球での生活に慣れ切ってしまっていたと思われていたある日、事件は起こった。
その日、地球から人口が一人減った。
ロディはこの世界からの脱走を成功させたのだ。
マナが極端に少なく、ほとんど力を行使できない世界で、それでもほんのわずかな小指一本分の力を使い、世界に穴を開けたのだ。
世界同士を移動するトンネル。本来なら向こう側から1日掛かりで行う作業を、ロディはこちら側からたった一人で20年という歳月を掛けて少しずつ穴を開けていったのだ。
この話を思い出すといつも笑うことができる。
ここで人生を終えるのが最良だと思っていた心が、またいつかあの場所へ帰りたいと言わずにはいられなかった。
そう思うと体が少し軽くなるような気がする。
このほとんど力が使えない世界で感じるこれが、自由というものなのかもしれない。
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