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空想お散歩紀行 大人向けサンタ

聖なる夜、クリスマスイブ。世界中の子供たちが一年のうちで一番楽しみにしている夜かもしれない。
サンタクロースは子供たちにプレゼントを配るために夜の空を飛んで行く。
サンタは子供たちのための存在であり、大人には関係無いと思うのが当たり前の考えだ。
だが、世界中の大人たちのため、というわけではないが、大人のために今宵の空を翔けるサンタもわずかだが存在する。
そして、そんな特殊なサンタが用意するのは普通のプレゼントではない。
子供向けのサンタが配るプレゼントは、その子供たちにとって全く新しい物である。
新しいおもちゃ、あたらしい本、少なくとも今まで見たことの無い物がプレゼントとして選ばれる。
だが、大人相手のサンタが用意するのは、本人の過去、思い出である。
子供の頃に夢中になって遊んだおもちゃ、時間を忘れて読みふけった本。
あれほど好きで、大切にしていたはずなのに、壊れてしまったり、無くしてしまったりして、いつの間にか思い出の中からも消えてしまった記憶の欠片。
それをサンタは大人たちに配るのだ。
どういうわけか、そのプレゼントは当時を完璧に再現している。汚れや傷までしっかりとついたままだ。
世界中のほんの数パーセントの大人しか受け取ることはできないプレゼントだが、それを手にした大人はただただ聖夜の奇跡を信じるのだ。思い出という贈り物に浸りながら。

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