空想お散歩紀行 オーパーツと環境問題
「博士!ついに見つけましたね!」
「うむ、やはり文献に書かれていたことは本当だったのだ」
二人の研究者が泥だらけになりながらも、今やそんなことや、ここまでの苦労や疲れなどどこかに吹き飛んで行ってしまっていた。
1000年前の遺跡とされる建物。その存在自体は既に数十年前に発見されていたが、実はそれは表部分だけで、その奥にさらなる遺跡が眠っていると長年研究が続いていた。
「隠された遺跡を発見できただけでもすごいのに、まさかこんなものまで・・・」
博士と一緒にここまで歩んできた助手は、目の前にある一つの物体に目を奪われていた。
「これは・・・材質はガラスだろうか。だが、この時代ではそんなものは・・・ましてやここまでの加工技術となると・・・」
それは、透明で光を何重にも反射する物体で、まるで凄腕の職人が作り上げたような複雑で緻密な形をしていた。
「博士、もしかしてこれは」
「うむ、いわゆるオーパーツというやつだ」
オーパーツ。その時代の技術では作ることが不可能とされている物。
「すごい!大発見ですよ。これは!」
上がるテンションを抑えきれない助手。博士の方も、態度にこそ現れていなかったが、心の中はどんな若者よりも激しい感情に溢れていた。
「それにしても、これは何なんでしょうね?」
「それはまだ分からん。何か実際に使っていた道具か、それとも儀式用の祭具か・・・」
新たな発見は新たな謎を生み、二人の研究者はその想像の海にいつまでも漂っていた。
「おーい、これってどうするんだっけ?」
「ああ、それは32B番のとこに置いといてくれ」
何てことの無い日常的な会話。しかしそれをしている者は、人間とはかけ離れた見た目をした異形だった。
片方の存在が、手に持った物体を目と思われる器官で見ながらつぶやく。
「ったく、面倒な時代になったよな。1000年くらい前だったら、こんなもんそこらに捨てて良かったのに」
「そう言うな。今は宇宙の環境を考えなきゃいけない時代なんだよ」
もう片方の存在も、手と思われる器官で持っている書類にペンを走らせながらぼやいている。
「ほら、何だっけ。太陽系にある星で適度に環境が落ち着いてるとこ。あそこはちょうどいい捨て場所だったんだけどな」
「何か捨てたことあるのか?」
「あるよ、1000年くらい前にも。使わなくなった筋トレ器具。当時流行ってただろ、透明なやつ」
「ああ、あったなそんなの。今やったらアウトだな」
「メンド―だね、ホント」
今、宇宙ではゴミのポイ捨てが問題となっている。宇宙環境を守るため、厳密に法整備が進んでいる。
地球で発見される、いわゆるオーパーツと呼ばれる物が古代からしか発見されない背景には、宇宙の環境問題があることに地球人は誰も気づいていない。
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