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空想お散歩紀行 ハッピー・バースデー・サイキック

超能力は存在する。
触れることなく物を動かす。自由自在に空を飛ぶ。離れた場所に一瞬で移動する。
様々な、現代の人間の科学や知識では測ることのできない現象を操る力。
それを使う人間を超能力者と呼ぶ。

そしてこの世界では『全ての人間』が超能力者である。
ただし、『限定的』という制約が付くが。
赤ん坊としてこの世に生を受けたその日、能力が発現する。その時に発現した力の種類がその子が使える超能力だ。
そしてそれ以降、全ての人間は、『誕生日限定』で超能力が使えるようになる。
つまり一年に一日だけ超能力者になれるのだ。
神の贈り物か、悪魔のイタズラか、とにかく人は自分の誕生日にだけ人を超えた力を使うことができる。
だが、どんな強力な力を使えるとしても所詮は一日だ。
例えその力を使って、たった一日で世界を征服できたとしても、翌日には普通の人だ。きっとその日の超能力者に倒されるだろう。
だから誕生日に大きな力を使えるからと言って、大それたことをしでかすやつが出ることはない・・・と思われるのだが、そこは人間の持ちうる特徴の一つで、最も解明が難しい「心」が関係してくる。
たった一日でも、明日どうなろうとも、自分の生まれたこの日をメチャクチャに好き勝手して謳歌しようとする輩は、文字通り毎日のように出る。
夏は熱中症が増え、冬は風邪が増えるみたいな季節性の法則などない。全ての人に等しく誕生日は与えられているのだから。
しかし、たった一日でも世界を傷つけ破壊しようとする者がいるのと同時に、たった一日でも正義の味方になりたいと思う者もたくさん存在するのだ。
そういうわけで、ほとんどの人が超能力を使えるからと言って、変わったことをせず普通に誕生日を過ごすその裏では、毎日どこかで、超能力による戦いが繰り広げられている。
日替わりヒーローと日替わりヴィランの戦いに終わりが来ることはない。人間が誕生し続ける限り。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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