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空想お散歩紀行 壁と天井のある街

「外」という言葉の本当の意味を、私は未だに知らないのではないか。
家から出る。学校に行く。友達の家に行く。ショッピングモールに買い物に出かける。
家から出ることはあるけれど、どこに行くにもあるのは壁と屋根。
街の全て、いやこの世界はどこに行っても、ずっと壁と天井が続いている。
天井や壁にはライトが埋め込まれていて、常に光を放っている。昼のライトと夜のライトが毎日決まった時間に切り替わる。
場所によっては風通りが悪くて暑かったり、寒かったりするが、世界はいつも同じ気温に調整され、包まれている。
雨というのは知っている。時々天井や壁を打つ音が聞こえてくる。
話によると、この天井や壁の向こう側から水滴が当たっているという。
生まれた時から壁と天井があるから、この向こう側に何があるかなんて考えたことすらない。
ここには全てがある。家もあるし、学校もあるし、お店もあるし、車も電車も走っている。
小学校の時に、壁の外側の世界について授業で習うが、まあ行きたいと思うような所ではなかった。
でも、それはあくまで教科書に載っていること。先生の口から聞いたこと。
自分で実際に見たわけではない。
今、私は普通に道を歩いている。多くの人が行き交っている。でもこれは、本当に「外」にいることになっているのだろうか。

https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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