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空想お散歩紀行 クリスマスの次に送るもの

かんぱ~~~い。
明るい声と、グラス同士がぶつかる小気味いい音が店内に響く。
居酒屋「三太交差」
今夜この店で、打ち上げと忘年会を兼ねた宴会が催されていた。
「いやあ、今年も大変だった」
「ああ、思った以上に雪がひどかったな」
「俺としては、贈り忘れをしなかっただけで十分だよ」
彼らはクリスマスイブの夜に子供たちにプレゼントを配りながら空を駆け巡っていたサンタたちだ。
聖夜の大仕事を終えた彼らは互いに労をねぎらい酒が進む。
「くぅ~~。やっぱ一年でこの酒が一番美味いな」
サンタクロースと言えば白ひげのおじいさんと思われがちだが、それは世間一般のイメージにすぎない。
実際は、性別や年齢はあまり関係無く、とにかくプレゼントを速く正確に運ぶこと、そのためのトナカイソリの操縦技術などの方が重要視されている。それにプレゼントを配る時には子供たちは寝ているわけだから、サンタが白ひげのおじいさんだろうと、黒ひげのおじさんだろうとあまり問題はないのだ。
彼らの話題はもっぱら今回の仕事のことだ。
どこそこで思わぬトラブルにあったとか、子供が目を覚ましたが何とかごまかせたとか。
話は尽きず、盛り上がりの一途をたどっていたその時、
「おっと、もうこんな時間か。じゃ、俺先に帰るわ」
「ああ、そうか。お疲れ」
一人の男が自分の席の周りに軽くあいさつすると、そのまま店を出ていった。
「何であいつ帰ったの?まだ10時前じゃん」
近くに座っていた別のサンタが軽く酒に酔った状態で隣に聞いていた。
「ああ、お前は知らないのか。あいつ、専任のサンタじゃないんだよ」
「へえ、ってことは俺たちみたいにこれで終わりじゃないってこと?」
「そう、別の仕事がこれから入ってくるのよ」
「そりゃ、ご苦労なこって」
疑問が解消したのか、彼の話題はそれで終わり、すぐにまた別の話題で盛り上がり始めた。
「あいつは運び屋だからね。サンタの仕事はそのうちの一つでしかないのさ。確か明日からは日本での仕事の準備とか言ってたなかな」
クリスマスが終わった翌週には、日本ではお正月が始まる。洋と和が180度入れ替わる空気の中で、その男は運び手として次の仕事に勤しむのだ。
神社仏閣に押し寄せる人々の願いを天にまで運ぶ仕事。または天から福を人々に届ける仕事。
彼は一年中、形のある物から形のないモノまで、それを求める誰かの所に運ぶことを繰り返している。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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