空想お散歩紀行 試される大地
北海道との通信が途絶えて早4日が経とうとしていた。
2025年、とある気象研究家が近い将来、北海道は人の住めない土地になると論文を発表した。
それは当時はまだ一部の人のみが注目するだけでほとんどの人は論文の存在すら知らなかった。
しかし、2030年頃から北海道の平均気温がどんどん下がっていくことになる。
かの土地は日本のただでさえ低い食料自給率を支えている重要拠点だ。
異常気象に対抗するため、北海道保護政策が進められることになる。
同時に、急速に発達しているロボット技術、AI技術をふんだんに投入することも各企業が始めた。
そして、2104年現在、北海道は一年を通してマイナス30℃を上回る時が無い、極寒の大地をなった。今でも、かつての建造物が崩れることなく凍り付いてその姿を残している。
しかし、各所に建てられた食料生産施設の中は安定した環境になっており、農業や牧畜が行われている。
だが、それらを行っているのは全て機械であり、今や北海道に人は一人も住んではいなかった。
そんなある日異変が起きる。
突如北海道との連絡が取れなくなったのだ。
通信機器に故障ではない。回線は生きている。
向こうからの応答が無くなったのだ。
そして作業ロボットたちの故障でもない。
本土から確認する限り、ロボットたちは一台も欠けることなく正常に稼働していることを、システムは示していた。
ちゃんと動いているという意味では異常は起きていない。
連絡だけが取れない。
北海道は巨大な食料生産工場だ。今日までは通常通りに食料の出荷は行われているが、もしこれが滞るようなことがあれば、大きな混乱を引き起こしかねない。
連絡が取れない以上、残された方法は一つ。直接現地に赴き、原因を調査するしかない。
かくして調査団が結成された。
北海道に人が入るのは、実に20年ぶりとなる。
そして彼らは知ることになる。雪と氷と共に閉ざされた北海道の真実を。
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