空想お散歩紀行 地獄とはその道のり
人は誰しも終わりを迎える。そして行くべき所へ行くのだ。
それはあの世と呼ばれる場所。
しかし、この世でまだ生きている者たちはほとんど知ってはいない。
天国や極楽と呼ばれる場所と、地獄と呼ばれる場所は大きく隔たれており、この二つは交わることはないと思い込んでいる。
だが実際は、あの世とは一つの世界で区別はないのだ。
しかし天国と地獄という概念は存在する。
では、何が違うのか。
あの世に行った人々がすることはただ一つ。
再び来る転生の時までに、新たに魂を作り上げること。
そのために彼らは仕事をする。
その仕事をする場所が、あの世の中心にある巨大な建物だ。
そこにあの世の住民が全て通うわけだが、生前の行いによってあの世のどこに住むことができるのかが決まる。
善い行いをした者ほど、中心に近く、悪い行いをした者ほど遠くに住むことになる。
当然、中心に近くなればなるほど、仕事場への往来が楽になる。
生前に悪行を積んだ者は、遠く離れた場所から仕事場に通わなければならない。
その際は、あの世の乗り物にぎゅうぎゅうに詰め込まれ、さらにそれを何回も乗り換えをするはめになる。
満員に詰め込まれた乗り物の中にいるのは、同じような者たちばかりなので、当然席の譲り合いなど起こるわけもなく、ちょっと足を踏んだくらいで激しい諍いを繰り返す。
長時間、不快な空間、怒りと苦しみのストレス。この者たちは仕事場に行くだけでかなりの消耗をする。それを毎日毎日行うのだ。
この繰り返される仕事場への行き来を、『地獄』とあの世の住人は呼ぶのだ。
ちなみに中心近くに住むことができた者たちは仕事場まで徒歩圏内である。
その他の物語
https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?