空想お散歩紀行 金色の島に向かって飛べ
希少な宝石があると聞けば山を越え、古代の遺跡があると聞けば海を越え、世界のどこかにお宝があれば、どんな手段を使ってでもそこに足を運ぶのが俺たちトレジャーハンターという生き物だ。
お宝というのは向こうから来てはくれない。いつだって俺たちはやつらを迎えに行かなきゃいけない。
だが、ここに一つだけ例外があった。
今日、ここアウルム山中腹には朝から人が集まっていた。中には一週間ほど前から既に陣取っていたやつもいるらしい。
登山客なんて爽やかなもんじゃない。
筋骨隆々の大男もいれば、いろいろな装備に身を固めたやつもいる。
見た目は千差万別だが、全員その目だけは、期待と欲望の色に輝かせていた。
ここにいるのは俺を含めて全員トレジャーハンターだ。
普通だったら、世界各地でそれぞれお宝を求めて動いていて、たまに同じターゲットを巡って共闘したり、対立したりすることはあるが、ここまで一か所に集まることはない。
それだけに今ここで見られる光景は、これから起こるあることが滅多に無いことだからだ。
俺たちの目的は一つ。とある島である。
その島は空に浮いている、いわゆる浮遊島で世界中の空を漂っている。
普段は空にぽつんと映る影のようなもので、世界各地にいくつもある浮遊島の一つに過ぎない。
だが、この島には一つ他にはない特徴があった。
それはこの島を住処とするある生き物である。
そいつの名は、アヴァロン。
見た目的には巨大なトカゲといったところか。
浮遊島で暮らすそいつらは、そこでしか自生しない植物を食べて生きている比較的温厚な生物だ。
俺たちはそいつら自体が目的なのではない。重要なのはそいつらの特殊な体質である。
アヴァロンは他の生物同様、生体活動の一環として取り込んだ栄養の残りカス、老廃物を体外に出す。
その際なんとそいつらは、老廃物を黄金として排出するのだ。そのおかげで、島の至るところに黄金がゴロゴロ転がっている。
老廃物と言うと聞こえは悪いが、黄金であることに変わりはない。
つまりアヴァロンは、生きている限り体から黄金を出す製造機みたいなもんだ。
俺たちトレジャーハンターにとって、いや全ての人間にとって夢のような生物。
普段アヴァロンが住んでいる浮遊島は空高くにあり、近づくことさえできない。
だが、4年に一度、その浮遊島が高度を下げるルートを通る。
それが、今俺たちがいるアウルム山というわけだ。
俺たちはここから浮遊島に飛び移り、再び島が高度を上げる約一週間ほどを島で過ごすことになる。
一応俺たちの間で決められたルールはある。
アヴァロンを傷つけないこと。これは今後も黄金を取り続けるためだ。
そしてお互い協力はしてもいいが、敵対はしないこと。
何せ4年に一度、わずか一週間の祭りみたいなものだ。存分に楽しもうというわけだ。
今か今かと待っていたその時、トレジャーハンター集団の一部が騒ぎ始めた。
その方向を見てみると、雲の向こうに薄っすらと黒い影があることが確認できた。
来た!ここにいる全員が同じことを思っただろう。
俺たちにとって夢の島がもう目の前に迫っている。
俺は長年愛用してきた道具たちに手を触れ、この後の無事と稼ぎを祈った。
さあ、今日からは俺たちのゴールデンウィークだ。
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