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空想お散歩紀行 まぼろし系ラーメン

寒い日には温かい物が食べたくなる。
その代表格とも言えるのがラーメンだ。
この国ではもはや国民食とも言える。
一つ100円レベルのカップ麺から、一杯数千円の高級ラーメンまで、庶民から金持ちまでハマる料理の一つだ。
だからこそ、そんなラーメンで一山当てようという者はいくらでもいる。
ここは国内にある有名なラーメン激戦区。
毎月のように、何十件ものラーメン屋が店を閉め、新しいラーメン屋が開店する。
ここで生き残る道はただ一つ、美味いラーメンを出すことだけだ。
ラーメンと一言で言っても、その種類はまさに千差万別。スープと麺という共通点はあるものの、それにしたってどんな材料を使うかで全く変わってくるし、そこにトッピングの具まで含めるとまさに星の数ほどのラーメンが存在することになる。
「ったく、あいつはいつ戻ってくるんだ」
とある一つのラーメン店の店主がしびれを切らしていた。
本日から開店の新店舗、その仕込みを始めなければならないのに、肝心の具材がまだ届かない。
苛立ちが不安になり始めていたその時、
「店長!お待たせ!」
扉が勢いよく開き、一人の青年が入ってきた。
「遅えぞ!どこほっつき歩いてやがった!」
「ごめんごめん。思いのほかてこずっちゃった」
青年は困ったように笑いながら、背負った荷物を調理台の上に置く。
「でもその代わり、極上の物を仕入れてきたよ」
その荷物の袋から出てきたのは、巨大な骨だった。
「おお、これが」
「そう。正真正銘、ルビードラゴンの骨。肉も少し狩ってきたから」
「よーし!さっそく仕込みを始めるぞ。ギガント特製竜骨ラーメンのデビューだ!こいつでここの覇権取りに行くぞッ!」
「気合い入ってるねー」
現在この地域のトップを走り続けている、リヴァイアサンやクラーケン等々、何種類もの具材を用いた魚介系スープの海鮮ラーメンに本日、一つのラーメンが牙を向く。
冬の夜は、どこまでも熱く煮え滾っていくのであった。

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