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空想お散歩紀行 サブスクリプション・マジック

魔法とは古来より当たり前に存在している力である。
誰もが扱える力であり、現代に至ってもそれは変わらない。
しかし、ほとんどの人が走ることができるからと言って、大会で金メダルを取ろうとしたら、それなりの才能や努力が必要なように、魔法も自分が使えるようになるためには相応に鍛錬が必要となってくる。
さらに、魔法に代わる、科学という力が発達してきたこともあって、魔法は時代の流れとともに静かに消えていくものになっていく。
そう、割と近年までは思われていたのだが、
とある技術の登場が時代を一気に変えていこうとしていた。
それは一人の男が起業したことから始まる。
彼の家系を遡ると、代々高名な魔導士の血が流れていることが分かる。
彼もその血が示すように、優秀な魔導士だったが、魔法が世界からオワコンのように扱われ始めていることに不満を持っていた。
そこで彼が開発したのは、現代の技術と古代の魔法との見事な合わせ技だった。
彼の先祖が代々集めた、魔法に関する技術と知識が詰め込まれた、通称『大図書館』が世界にどこかにあるという。
その大図書館を巨大なデータベースとして、そこに精神魔法でリンクし、魔法をダウンロードするという技術を彼は開発した。
これにより、魔法を使うための儀式や契約を執り行っていなくとも誰もが魔法を使えるようになる。
これを元に、月に定額の料金を払うことで、自由に魔法が使えるようになるサービスを提供する会社を彼は立ち上げたのだ。
サブスク魔法。
使えるようになる魔法は初級的なものがほとんどだったが、若者を中心に魔法の社会的価値が見直され、今では誰でも気軽に魔法を日常的に使っている。
もちろん、新しいものには批判が生まれるのはどの分野でも同じだ。
サブスク魔法も例外ではなく、伝統的な魔法を受け継いできている魔導士からしてみれば、苦労せずに楽に魔法を使うことは文化への冒涜であり、危険であるという声は小さくはなかった。
事実、知識が乏しい状態で使うことによるトラブルや、気軽に使えるがゆえの魔法依存も社会問題になりつつあったが、サブスク魔法は今や時代の流れになりつつある。
時代の流れというものは、その最初のきっかけでさえ、それが最終的にどこに辿り着くのか分からないものなのだ。
このサブスク魔法でさえ、次なる大きなステージのステップにしか過ぎないのかもしれない。
ただ今は、日々気軽に魔法が世界で使われている、それだけである。

https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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