空想お散歩紀行 訳あり星
「さあ、行きますわよ」
「はい、お嬢様」
随分レトロな服装に身を包んだ小柄な少女と、その後ろには、こちらもまたレトロなシャツやジャケットをピシっと着こんだ女性がつき従っていた。
どちらも、地球の古代ファッションのようだった。
そんな一見時代錯誤のように見えるが、妙に高貴な雰囲気をまとっている二人がいるのは、宇宙中の品、生活用品から高級品まで、ここに無い物は無いとまで言われている、一人暮らしの大学生から家族連れまで毎日多くの人が訪れる、常時数万点の商品が並ぶと言う大型ショッピング店『ココティコ』である。
ユニバースネットでの販売ももちろん行っているが、それでも直接この店に足を運ぶ者が大勢いるのは、この店がもはや一種のアミューズメント施設のような感じになっているからだ。
そこに現れた高貴な感じの二人。その目的は、
「おお、あったぞ」
「左様ですね、お嬢様」
二人の目の前には光を放って輝く球体がいくつもあった。
彼女は自分の所有する土地の空を飾るための『星』を買いに来たのだった。
「う~~~~む」
真剣な表情で悩むお嬢様。彼女が手にしているのは一等星。
「これがいいのだが・・・でも、うーーん」
一等星一つ一つの値段は彼女にとってそれほどでもないが、自分の思い描く空を作るためにとなると大量に買う必要がある。それは彼女の財布に大きなダメージを与える。
「ん?」
その時、彼女の視界の隅にある物が映った。
それは一等星のように一つ一つ箱に入ったものではなく、大量の星が袋詰めされた物だった。
「あれは・・・」
「お嬢様、あれはいわゆる『訳あり商品』という物です。工場で星を作る過程で欠けたり割れたりして、一等星として売れなくなった物を、ああしてまとめ売りしているのです」
その袋の中に詰められていた星は、確かに一等星としては小さく、どこかが欠けた物ばかりだった。大きさとしては全部四等星以下といったところか。
「・・・よし!これにしたぞ!」
満面の笑みで袋詰めされた星を三個ほど抱える。
「言っておくが、こちらの方が私の目的に近いというだけだからな。決してお得とか、コスパがいいとか、そんな庶民のような感情で選んだわけではない!」
彼女は特に聞かれてもいないことを弁明した。
「承知しております、お嬢様」
付き人の彼女も特にそこには触れずただ受け止めていた。
「お嬢様、あちらで流れ星用のキットも販売しているようですが」
「うむ。ではそちらにも行くぞ」
付き人が手にしているカートに商品を入れるとお嬢様は先へと歩き出した。
二人の買い物はまだ始まったばかりだ。
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