空想お散歩紀行 暑い日は外出は避けて過ごしましょう
夏は嫌いだ。とにかく暑いから、外に出るだけで億劫になる。
技術がどれだけ発達しても結局人間は自然には勝てないのだ。
いや、これは自然よりも人間の行いの方が原因として大きいだろう。
人間が我が身のことばかり考え、自然を好き勝手に浸食していった結果なのだ。
『警報。熱中症の危険が高まっています。不用な外出は避け、屋内の涼しいところで―――』
携帯端末がアラームを鳴らす。この夏でもう何度目か分からない。
まったく、これが地球という檻を離れ、大宇宙で暮らす人間の生き方なのか。つくづく疑問に思う。
このスペースコロニーは一年を通して、コロニー全体が快適な温度や湿度を保つよう空調が効いている。
しかし、コロニーの軌道上、ちょうど地球文明の頃の名残で『夏』という名前が付けられた場所を通過する際に問題があった。
そこは、かつての地球文明時代の人間たちが好き放題に宇宙開発を行った際の、無計画で無責任な宇宙のゴミ、いわゆるスペースデブリが大量にある宙域だった。
ゴミと言っても侮ることはできない。もし万が一でもコロニーの重要区画にデブリがぶつかろうものなら大惨事になりかねない。
だから、デブリがこのコロニーに近づく恐れがある時は、対デブリ用のシールドがコロニーに張り巡らされることになっている。
ただ、このシールドがエネルギーを食う代物なので、シールド展開時は一時的にコロニー内の空調設備がエネルギー節約のために機能が落ちるのだ。
結果として、コロニー内の気温が上がることになる。
前文明のゴミが今の自分たちに降りかかってくるとはとんだ災難だが、これほどのゴミを出すほどの開発をしたおかげで今があることもまた事実。
このコロニーに住んでいる人間は皆、やりきれない気持ちで毎年夏を過ごしているのだ。
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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5
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