空想お散歩紀行 ドメスティック・シークレット
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
いつもの朝の風景だ。僕がランドセルを背負って家を出る10分前にパパが先に出発する。
ママは必ず玄関まで見送りに行く。
そして僕が学校に行くときもママは同じように見送ってくれる。
いつもの朝の風景だ。
でも、僕は知っている。
パパは会社に行って、毎日僕やママのために働いてくれている・・・とママは思っている。
けど実際は違う。パパは世界を救うヒーローなのだ。
毎日、この世界を支配しようと企んでいる正体不明の組織と戦っている。
そしてそのパパも正体不明のヒーローとして、世界の誰も本当の名前も顔も知らない。
僕を除いては。
どこからともなく現れて人々を助けるヒーロー。でもいつも助けに間に合うわけではない。時に組織の方が上手を行き、実情として一進一退の攻防を繰り広げているという感じだ。
そんなパパを僕はすごいと思う。どんな逆境でも立ち向かう勇気があるからだ。
そして、僕はもう一つ秘密を持っている。
ママは僕たちが昼間学校や仕事に行っている間、家のことを全てやってくれている。ご飯の支度、掃除、洗濯。家のことはママがいないと回らない・・・とパパは思っている。
けど実際は違う。ママはこの世界を支配しようと企む組織のボスなのだ。
毎日、自分たちの計画を阻止しようとしてくる正体不明のヒーローと戦っている。
基本ママは、家で家事をしながらリモートワークで世界征服を目指している。
正体不明の組織のボスとして、世界の誰も本当の名前も顔も知らない。
僕を除いては。
緻密な計画を立てて、効率よく結果を出しているけど、いつも上手くいくわけではない。
どんなに計算を重ねた計画であっても、圧倒的なヒーローのパワーで粉砕されることもあって、実情一進一退の攻防を繰り広げているという感じだ。
そんなママを僕はすごいと思う。壮大な計画を達成しようという覇気があるからだ。
家ではパパとママはすごい仲良しだ。少なくとも僕は二人がケンカしているところなんて見たことも無いし、想像もできない。
僕はこのまま観察を続けていこうと思う。
世界がどうなるか、本当に楽しみだ。
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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5
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