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【書評】眠りがもたらす奇怪な出来事: 脳と心の深淵に迫る ガイ・レシュジナー (著)
僕は毎晩寝ているのに、睡眠についてなにも知らなかった。。。そう思わされるほど、発見に満ちた面白い一冊だ。シルバーウィークの連休で読むのにオススメ。子供を寝かしつけたあと、ゲームをしたりYoutubeを見たり、つい夜ふかしして夜型になってしまう僕のような人にはぜひ。
現代人の悩み、それは疲れやすかったり、太りやすかったり、ストレスを感じていたり、集中力が続かなかったり、、、こういった不調の原因は睡眠の取り方にある可能性が高い。
本書は働く現代人にとって必読である。現代人が抱える、ちょっとした体調不良と睡眠について理解し、それを軽くするヒントが散りばめられている。
現代は照明が無数にあり、テレビやスマホから24時間発信される情報を受け取る。コンビニは24時間営業している。そのため、僕たちは極めて睡眠の障害を抱えやすい環境に生きている。
著者のガイ氏はロンドンの医者である。睡眠障害の治療の専門家であり、神経学者である。本書は彼が診療した患者の症例をかんたんな言葉で解説したものだ。
「医師は話すにせよ聞くにせよストーリーが大好きだ」というだけあって、読者の好奇心を刺激するストーリーを聞かせてくれる。
著者が出会った患者の症例を読んで、思わずヒエッと声が出た。例えば、夜寝ている間にバイクを乗り回し運転する患者、寝ているのに無意識のままセックスしようとして妻に訴えられた夫、寝ている間に食事を取る患者など。いったいなんでこんなことが起こりうるのだろうか?睡眠と覚醒が同時に起こることなどありえないはずだ。
イルカは人間同様、睡眠を取るが溺れたりしない。 なぜならイルカは「半球睡眠」といって、睡眠を取りながら脳の一部を覚醒させておくことができるため、溺れたり障害物にぶつかったりすることがないのだ。
でも、人間は半球睡眠の能力を持たない、とこれまで信じられていた。しかし、それが間違いであることがわかってきたのだ。 人間の脳も、覚醒と睡眠が同時に起こりうる。人の脳はオンとオフのスイッチによって切り替えられるのではなく、その中間があり、つまみのように調節されるのだ。
僕にとって最も役立ったエピソードは体内時計の話だ。人間には体内時計のような、「概日リズム」と呼ばれるものがある。僕らの脳、腸、腎臓、肝臓、ホルモン、体内のあらゆる細胞は24時間のリズムの影響を受ける。
この概日リズムが乱れる(遅れて夜型になる等)と心身ともに消耗する。社会の動きと同期できず学校や会社で目の前のことに集中できなくなり、孤独感や疎外感を覚え、ひどく不安になってしまう。改めて決まった時間に寝て起きることの大切さを知った。
著者のガイ氏が睡眠に強い関心を持ったのは、彼が医学生だった19歳の頃。当時ホットな、DNA構造の解明者のひとり、クリック氏の睡眠障害に関する論文をたまたま目にし、惹かれたことがきっかけだった。
クリック氏の論文は「睡眠は脳のメンテナンス時間であり、無用な情報を除去する機能がある」と考えていた。これは当時、斬新な仮説で、「睡眠はただの休息ではなく、もっと重要で複雑な脳のはたらきの集まりである」という考え方にガイ氏は強く惹かれ、睡眠の研究を志した。
ガイ氏は睡眠医学の魅力についてこう語る。睡眠は、脳内のちょっとした欠陥で顕著な、原因不明の疾患が起こる。これは胸の痛み、頭痛、発疹などよくある疾患と違い、脳と心の内部で起こることなので、原因を自覚できないことが多い。まだまだわかっていないことも多い。この奇怪な症状を解明していくことが睡眠医学の大きな魅力である。