ワークショップ型授業の報告)2023年2月8日(水)に「環境教育の現場を知る」というテーマで岐阜県立森林文化アカデミーにて大西琢也が非常勤講師を務めさせていただきました。
現在地を知るワークから、野外で80分の火起こし体験!心も掌も一枚皮が剥けた半日になりました。
0.会場と参加者
会場は「岐阜県立森林文化アカデミー」です。
https://www.forest.ac.jp/
〒501-3714岐阜県美濃市曽代88
TEL 0575-35-2525 info@forest.ac.jp
岐阜県に引っ越すまで存在を知りませんでしたが、こんな学校があったなんてーという驚きと感動で衝撃を受けました。先生方も多種多様で私も学生に戻り学びなおしたいぐらいです。
今回は「森と木のクリエーター科」の森林環境教育専攻をされている2名の学生さん(1年生の後期)が対象でした。(諸事情により教員と学生1名は欠席)
さらに、急遽でしたが会場となっている森林文化アカデミーの敷地内にある森林総合教育センター(愛称:morinos モリノス)の職員2名が参加されました。
https://morinos.net/
こちら、子どもから大人、家族、団体などで学びと遊びが両立しているステキなところです!
建物の外観だけでなく、中にはレンタル道具や面白い本もいろいろあります。
さらに移動できるワゴン車もあり、出張までしているという素晴らしさ。
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1.環境教育とは?
そもそも「環境教育」ってなんでしょう?
エコ?エゴ?その境界線は?
ま、そんなツッコミ、問いかけは今回は無しで始まりました。
※これだけでも、夜通し語りあえますよね。
さて、環境教育の始まりが海外と日本列島では違うという前提において、現在地はどうでしょうか。
文部科学省によれば・・・
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kankyou/index.htm
ホームページから引用===
現在、温暖化や自然破壊など地球環境の悪化が深刻化し、環境問題への対応が人類の生存と繁栄にとって緊急かつ重要な課題となっています。豊かな自然環境を守り、私たちの子孫に引き継いでいくためには、エネルギーの効率的な利用など環境への負荷が少なく持続可能な社会を構築することが大切です。そのためには、国民が様々な機会を通じて環境問題について学習し、自主的・積極的に環境保全活動に取り組んでいくことが重要であり、特に、21世紀を担う子どもたちへの環境教育は極めて重要な意義を有しています。
===ここまで
2003年7月25日に公布された「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」もあります。
ウイキペディアによれば===
持続可能な社会を作っていくために、健全で恵み豊かな環境を維持し、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする日本の法律である。略称は、環境保全活動・環境教育推進法(かんきょうほぜんかつどう・かんきょうきょういくすいしんほう)である。
==ここまで
・・・ということで、一言で表しにくいのが「環境教育」であり、
それゆえひとり一人の概念や想像が違っているのかもしれません。似たような言葉も乱立して理解が追い付かないということもあります。
このあたりの課題や混乱については、こちらのリンク先に整理されていますので、深く知りたい方はご覧ください。
資料) 星野敏男(明治大学)中教審分科会内「青少年の体験活動の推進の在り方に関する部会 第7回」2012/03/05
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo5/008/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2012/04/18/1319290_06_1.pdf
私は「環境教育」だけでなく、「きょういく」とは「生きるを学ぶ、未来を共に育む手段」だと思っています。
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2.企画趣旨は?
事前ヒアリングと相談を2回、合計3時間ほどして、教員の想い、学生の現状、学内の動き、学生の興味関心を伺いました。
それらを踏まえて2つの案を企画し準備して当日になりました。
通常であれば、事前に1つに絞って、「はい、今日はこれをします!」という方法が多いと思います。
しかし、「環境教育の現場を知る」というテーマであれば、
表面的なことだけでなく、舞台裏も知っていただくのが良いかと思いました。
非常勤講師として声をかけていただいた発端や背景、企画案から共有しました。
それらを踏まえて、学生さんの現状や想いも伺ってホワイトボードに描き現状を収穫、確認して相談です。
何を何のためにどのようにするのか。
お互いの話を聞きながら、現場で決めていくということです。
学生さんにとっても、職員さんにとっても、私にとっても、新たな学びの場として試行錯誤が始まります。
正解を求める学びではなく、双方向での学びを育む。
激変した時代を子どもたちだけではなく、大人も含めて、
同じ土俵で仲間として生きていきたいですね。
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3.ルーブリックとは?
森林文化アカデミーでは、多くの体験的な学びをされているそうで、それが一つの特徴になっています。
その一方で、体験をふりかえったり、自分の現在地を確認する機会が少ない課題も聞こえてきました。
学内では「ルーブリック」作成の動きもあるそうです。
そこで、「火」と「ルーブリック」を体感していただく授業の流れを考え、相談しました。
みなさん、「ルーブリック」って知っていますか?
え?
「ルービックキューブ」なら知っている!
はい。私もです。笑
似たようなものです。いや違います。どっちなんでしょう。
実は15年ほど前から、私はスタッフの「好きるUP」をするために、ルーブリックのようなものを創りこんできました。
今回もさらに、いろいろ調べてみたところ、
いくつかの特徴があったので箇条書きにしておきます。
◆ルーブリックとは?
・評価の一手法である。
・見えないものを評価するために使われる。
・一方的ではなく、共に創ることができる。
・活動(学習)を行っている中で、結果のみならず途中段階や状態を評価するために用いられる評価基準
・評価項目(何を学ぶのか・行動)と
数値的な尺度(到達度レベル・質)を表にしたもの。
・「基準」が共有されている。
・相互評価が前提である。
★学び手にとっては、現在地の確認、学習の改善など
→他には?
★伴走者にとっては、協働の可能性、環境の改善など
→他には?
★共育機関にとっては、質の保証。価値の提案など
→他には?
この中でも特徴的だと思うのは、
「教える側や運営者が一方的に創って渡したり押し付けるものではない」、つまりは「一緒に創るもの」という点が挙げられます。
そして、「相互評価する道具」であるという点もあります。
評価される側とされる側になれば、どうしても権力的な上下関係のようなものが強く影響します。
まだ導入はこれからという段階の日本列島においては「ルーブリック」という言葉を使っていても、似て非なるものがあるように感じます。
教育から「共育」へ。
転換期にうってつけの道具だと私は思います。
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4.ルーブリックを作成するには?
こちらを参考にされると良いかと思います。
関西大学教育開発支援センター
ルーブリックの使い方ガイド(学生用)
https://www.kansai-u.ac.jp/ctl/activity/pdf/rublic_guide_student.pdf
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5.ルーブリックの実際は?
私は野外技術・知識編として5つの分野でルーブリックを創っています。火、刃物、食、救急法、放射能について、参加されたみなさんに10個ほど実物を試していただきました。
例えば・・・
・放射線マークを描き、そこに示された放射線3種の名称を言える?
※マーク
※線1
※線2
※線3
・最寄駅から家までの解りやすい地図を10分以内に書ける。
※初挑戦
※目印不足
※15分以内
※10分以内
・野外糞尿を10回以上経験し、実施時の注意点を3つ以上言える?
※初挑戦
※10回経験
※注意2つ迄
※注意3つ以上
・海で食べられるものを10種類以上集めることができる?
※1種類
※5種類
※8種類
※10種以上
ここで大切なのは、できる。できない。の評価に一喜一憂するのではなく、現在地をお互いに知って、次に、これからにどう活かすかということです。
ですから、ルーブリックに記載する項目や段階は、お互いに相談して納得できるものに仕上がったら、仲間としてもチームとしても、個人としても「地図」を手に入れるようなものです。
地図がないままに、感情的になって彷徨うのではなく、
「学びの地図」を創るところから一緒にできれば、
途中段階の学びも凄まじくあります。
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6.火起こし体験80分間のキセキ!
さて頭だけではなく、体験から学ぶことは多くありますが、
相談した結果あえて体験を後にしました。
1年生の入学したてではなく、様々な経験を踏んでからの今、これから卒業後の進路や就職も念頭において残り1年をすごしていくことになるからです。
火起こし、焚火、それらの歴史的なことなど、いろいろありますが、
「錐揉式発火法」を1人ずつやってみることになりました。
できなくても良いので・・・と言いながら、全員が本気です。
同じ道具、同じ場所であっても、ひとり一人の性格や特徴が如実にあらわれます。
そうして、あれやこれや呟いたり、汗だくになりながらも、なかなか煙さえも立ち上がってきません。
棒を私が回すと煙が出ることに不思議そうな顔をしていますが、
同じ人間です。
単純な道具だからこそ、奥が深いのですが、
まずは頭を使いすぎです。
身体性を発揮するには、本性を現さないと。
授業の終了時間もとっくに過ぎて、お昼ご飯もそっちのけで、
みなさん一生懸命に棒を回しました。
なんと80分!あっという間に過ぎて、
全員が着火までいきました。
疲れ果てたような、やりきったような、そうでもないような。
ま、結果(火が着いた瞬間)も大切ですが、
私にとっては過程(試行錯誤した80分)が掛け替えのないものだったと感じています。
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7.参加者の感想(抜粋)
・自分の手で回したのは、初めて。回しやすいもの、回しにくいものがあるのだなと。自分にあったものを探すことが大切。今まで教えてきたけれど、ワタの作り方、包み方など知らないこともあったので、知れてよかった。
ルーブリックについては今後のmorinosでもいかしていけると思うのでいかしていきたい。
・時間があっという間だった。1時間以上たった気がしない。
・手がいい感じでけむりの匂い。火をつけたい気持ちで必死だったけど楽しめた。
・振り返る時間も大切だと感じた。ふりかえりが何なのか解っていない気がする。講義の最後に流れや手法も教わって少し理解が進んだ。
・全部話しながら作っていく方法いいなあ。
・自分がやりたいという主体的な時間だとあっという間。80分やらされる苦痛とは違う。主体的の大切さ、おしつけない(強要しない)大切さ。
・みんなでこの授業をどうつくるか考えられてよかった。
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8.体験しただけで終わらない学びを
お互いの現在地や未来像を分かち合い、今ここから何ができるのかを対話し、育んでいく。
そのために協働して環境を整えていくと、ひとり一人の力を発揮できる。
野外で学び、野外で遊ぶことは、その一つの手段ではありますが、
共に育むことの面白さ、気楽さ、段取りの苦労と喜びを感じました。
いつもながら言い出しっぺの萩原・ナバ・裕作さんの無茶ぶりと
事前から事後まで準備、相談など様々にフラットに話し合えた
谷口さんのお2人に大感謝です。
体験を次の行動へ。
未来へつなげていきたい。
仲間たちとの再会、機会を楽しみにしています。
ありがとうございました!!
【連絡先】
大西 琢也 yajin★ugaku.com
略歴>>> https://note.com/takuyaonishi/n/n2eac871116a0
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