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呼吸‐08 腹横筋と反作用、パフォーマンスへの応用

格闘技は身体で反作用を受け止めるスポーツですので、わかりやすいようにパンチのフォームで説明しましたが、「呼吸、腹横筋、筋力発揮」のリンケージは応用範囲がとても広いです。

 バッターであれば、バットをスローモーションで振り、ボールがミートする瞬間で止めてみましょう。パートナーは軽くバットを押し返してみましょう。このときの呼吸、そして腹横筋の収縮を確認してみましょう。

上半身と下半身がつながっている感覚はありますか?
さらにこの時、各関節での反作用をどのように感じるでしょうか? 

どこか1ヶ所に反作用が集中してしまうようなら、それは危険なサインです。打撃の度に負荷がかかり、ダメージとして蓄積されてしまいますから、各関節の角度を見直して全身の関節で負荷を受け止めるようにしましょう。


テニスやバドミントンならラケット、剣道家なら竹刀、ドラマーならスティックをもって、ヒットの瞬間止めてみる。その時の「反作用をどこでどのように受けるか」がパフォーマンス向上のヒントです。


 サッカーのシュートでボールをとらえる瞬間、呼吸および腹横筋の収縮はどんな感じでしょうか? 呼吸と腹横筋の収縮のタイミングが合っていれば、シュート動作に上半身の筋力が参加してくれます。

息をすってシュートを打つと、足だけでボールを運ぶ感じになってしまいます。わざとそれを経験しておくのも大切な練習です。

私たちの脳は比較や差で理解しますから。呼吸と腹横筋収縮で、上半身と下半身をつないで大きな筋力を発揮してみましょう。

 ボーカリストの方、アクターの方は、声やセリフを響かせるときの呼吸やお腹の感じはどんな感じがベストでしょう? ある俳優の方がパンチの反作用で腹横筋を強く収縮する練習した後、同じセリフを発したら声がスタジオ中に響いた、なんてことが実際にありました。

発声や呼吸の練習と、お腹を引っ込めながらの全身運動を組み合わせれば、声を出すだけよりも、もっと大きな運動イメージで、肉体を生かした声を届けることができます。

 日常生活でも重いものを持ち上げるとき「せーの」「ヨイショ」と声を出すことがありますが、これも「息をはいて腹横筋を収縮させ、腰を守りつつ大きな筋力を発揮する」というかなり高度な運動です。

ウェイトリフティングやパワーリフティング、柔道やプロレスなど、瞬間的に大きなパワーが必要とされる競技では、呼吸がダイレクトに安全に、選手生命に関わってきます。

ちなみに私は、話のおそろしく長い人(=面白くない)につかまって逃げられないとき、会議などで「これやって何の意味があるの?」以外の感想が全くもてないときなどに、息をはいて腹横筋を収縮させる練習をしています。誰にも悟られずに強くなれるので、静かなおすすめです。


 センスに溢れているのに呼吸と動きがズレているアスリート、上半身も下半身もしっかりしているにもかかわらず筋力を十分発揮し切れていないファイター、腹横筋を使えていないため腰痛を起こしがちなドラマーなど、いろんなケースに出逢うたびに、呼吸と運動の医学的背景を共有しなければと感じていました。呼吸の中に小さなヒントが見つかれば幸いです。


運動のトリセツ、パフォーマンス医学




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