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合計点では不採択

 アイデアを考案した後、評価項目を設定し、それぞれに点数をつけて合計点で採否を決める手法は、一見合理的に思えるもの。けれどもこの方法では平均的で平凡なアイデアに落ち着いてしまうことが多いのが実情。

 その理由は単純で、どの項目にも特化していないから。「お客様もいそう」「課題もありそう」「解決策も作れそう」「経営資源も活かせそう」「利益も出そう」——こうしたすべての項目に無難なアイデアは、どの企業でも誰が実行しても同じような結果になり、特筆すべき変革や独自性を生み出すことができないもの。

 例えば「ミカンを用いた消臭スプレー」というアイデアを考えたとします。確かに、ターゲットとなる顧客は存在し、解決すべき課題もあり、製造も可能で、利益も見込めるに違いない。けれども、それだけでは新しい事業の柱にはならず、市場に大きな変革をもたらすこともない「まあ、あり得なくはないね」といった程度のものになりがち。

 というわけで、平凡なアイデアに陥らないためにはどうすればよいのか。その視点の一つにある「特化」を紹介していこう。

 一つ目の特化は顧客。「そんな人をターゲットにするの!?」と驚かれるような市場を狙うことが重要。たとえば、一般的には家庭向けと考えられる消臭スプレーを、魚市場の独特な臭い対策に用いるぞ!といった取り組み。既存とは全く違う顧客を狙うことで新しい市場やニーズの発見と獲得に繋がっていく。



 二つ目の特化は資源。「そんな経営資源を使うの!?」と意外性のある資源の活用を考えることが重要。たとえば、ミカンの実や皮を使うのは当然の発想だけれども、さらに踏み込んでミカンの葉や花を活用することで、新たな価値を生み出せる可能性がある。ちなみに和歌山県の有田エリアを五月前後に訪れると、真っ白なミカンの花々が咲いて、町中が甘く爽やかな柑橘系の香りに包まれる。冗談抜きでオススメなのでみんな来てくださいませ。

 ちょっと脱線したけれども、三つ目の特化はビジネスモデル。「そんな方法で儲けるの!?」という驚きを提供する収益モデルを考案。たとえば、消臭スプレーにカメラを内蔵し、魚市場でスプレーを使用するたびに撮影を行い、最新の魚市場情報を取得。そのデータを魚研究機関に販売するという新たなビジネスモデルもあり得るかもしれない。

 アイデアを考案した後に評価項目を設け、それら全ての項目に「OK」が出るようなアイデアは、無難で平凡なものになりがち。アイデアを選定する際には、顧客、経営資源、ビジネスモデルといった何かしらの項目に特化し、独自性を持たせることが重要。さぁ、見たことも聞いたこともない未来に向けてアイデアを生み出し、そして選び抜いていこう。No Talk, All Action!!!

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