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R&Dのスタートアップ協業

 とある素材メーカーのR&D(研究開発)部門の御方曰く、スタートアップとの協業を検討する理由は大きく分けて三つあるとのこと。というわけで今回はそれを簡潔に整理していこう。具体例として、ミカン廃棄物を活用した次世代燃料を研究するスタートアップとの協業事例を交えながら。

 R&Dのスタートアップとの協業理由の一つ目は、顧客との接点を持つため。組織が大きくなればなるほど、研究開発に携わると顧客との距離が遠のいていってしまい、自分たちの研究や技術がどんな風に役立つのか見え辛くなってしまい、市場の本当のニーズが掴み辛いことも。その打破を目指し、スタートアップとの連携を取る。

 例えば、ミカン廃棄物を活用した次世代燃料スタートアップは、次世代燃料の導入に前向きな事業者との接点を多々持っている。そんな彼らと協業を実現することにより、大企業側は現場感覚が養われ新たな技術活用のヒントや市場の潜在課題を知ることへと繋がっていく。

 R&Dのスタートアップとの協業理由の二つ目は、中長期的な視点を持つため。研究開発となると、短期的な成果ではなく、十年二十年後の世界の変遷を見据えて取り組む必要があるもの。しかしながら、社内の既存の知識や慣習だけでは視野が狭まりがちだからこそ、将来に生まれる市場を取りにいくスタートアップとの連携を取る。

 例えばミカン燃料スタートアップは、持続可能な社会や循環型経済への構想を持ち、十年後の当たり前を目指してカタチにすべく挑戦を重ねている。となればR&D部門は彼らとの対話を通じ、自社はどのようにエネルギー産業に将来貢献できるのか、大手だからこそ持たねばならない環境への責任とは何かと、長期的な技術戦略を練る上で貴重な示唆を得ることができる。

 R&Dのスタートアップとの協業理由の三つ目は、スタートアップの温度感やスピード感を養うため。組織というものは大きくなればなるほど身動きが取れなくなり、小さく試してすぐに改善、取り敢えずやってみる、といったことの難易度が上がっていく。しかしながら、スタートアップと連携してプロジェクトを回すことで、新しい物事を世に実装していくスピード感、柔軟性の高さを学ぶことができる。

 例えばミカン燃料スタートアップは、最初はミカンの皮を既存の酵母を用いて分解を試みていたものの、そのKPIが未達となれば急ぎ世界中から他の手法を探し出し、キノコの菌糸を用いて分解して燃料を生み出す方向へと急ぎ舵を切るかもしれない。キノコの菌糸は本当に使うべきか?その企業は取引して大丈夫なのか?実績はあるのか?といった風に、もし自分たちが進めていたら、がんじらめで何も生まれなかったであろう在り方を見直す一手にも繋がっていく。

 大手企業のR&Dのスタートアップとの協業は、大きく分けて三つの価値があるとのこと。一つ目は顧客の視点、二つ目は未来の視座、三つ目は行動の速度。その三つの価値がお互いに相乗効果を生み出し、より良い未来へと繋がっていくことを心から願っています。

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