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耳障りの良い言葉たち

「世界を平和に!」「日本を元気に!」こういったメッセージは、誰もが共感する美しいもの。けれども残念ながら、ビジネス世界に踏み込むと、こうした耳障りの良い言葉たちは出来る限り避けなくてはいけない。

 一つ目に、美しい願いは抽象的すぎて実行できないから。「世界を平和に」といったメッセージは心に響くものの、具体的に何をすれば達成できるのかが曖昧。必要な手順や成功を測る基準が存在せず、行動に移すことが難しくなっていく。

 例えば、「ミカンを元気に」というスローガンを掲げる企業があったとして、いったいどんな事業展開をすれば良いのか、そもそも何をすれば成功になるのか定義しようがないのと同じこと。

 二つ目に、美しい願いは顧客の視点が欠けているから。ビジネスにおいては、顧客が抱える具体的な、それこそ針の穴ほどピンポイントの課題を解決することが基本。けれども「日本を元気に」というメッセージは、中本が愛して止まないフレーズ「誰の、どんな課題を、どうやって解決するのか」がぼやけてしまい、ビジネスへと繋がっていかない。

 例えば、「ミカンを元気に!」と叫んでしまうと、「で?お金を払う人は誰?何に困っていて四苦八苦しているの?それに対してどんな価値を持った製品やサービスを提供するの?」と鋭いツッコミが飛んで来る。

 三つ目に、美しい願いはスケールが大きく責任感が分散してしまうから。「世界」や「日本」という広い範囲を狙うと、関わる一人ひとりが「自分がやらなくても、きっと誰かがやるだろう」と考えがち。結果、メッセージには共感してくれても、具体的なアクションのフェーズになると誰も行動しない状況に陥ることも。人が動く出すには焦点を絞ることが欠かせない。

 例えば、「ミカンを元気に!」と口にして和歌山で仲間を集めたとしても、愛媛県とか熊本県とか静岡県とか、ミカンの名産地は全国にたくさんあるから、きっと誰かがチャレンジしてくれるよ!という気持ちが芽生えていくようなもの。

「日本を元気に」「世界を平和に」そんな広く美しいメッセージは行動や成果に繋がらない。ビジネスへと昇華されない。だからこそ、願いは「たった一人が抱える切実な感情」に落とし込んでいこう。小さな課題解決の果てに、世界は変わると信じて。

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