オフィスを飛び出し加速する事業アイデアの実装
挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回のインタビュー対象はカルビーにてオープンイノベーションを手掛ける堀江 佳世さん。オフィスを飛び出し社外とのコラボレーションを進める背景や想いを伺いました。
── 堀江さんはどんなお仕事を手掛けていらっしゃいますか?
今はカルビー新規事業本部の Calbee Future Labo で働いています。
──「Calbee Future Labo」…訳して「カルビーの未来研究所」とは心躍りますね。具体的にはどんなお仕事でしょうか?
カルビーの新しい事業の柱を作ることがミッションです。一言で表すとヒット商品を作るために設立された組織です。
── ヒット商品を生み出すことが条件とは中々にハードですね(笑)
仰る通りで、中々に無茶なミッションです(笑)実はカルビーってこれまで約10年周期でヒット商品や、会社としてブランドの礎となるようなものたちが生まれてきました。けれどもここ十数年、そう胸を張って言えるものが出てきていなくて。
── 経営層が危機感を持たれ、本腰を入れられたわけですね。
もちろん、カルビーに開発チームは以前からあり、日夜新商品の開発に取り組んでいます。ただ、どうしても長年続けてきた既存の手法や考え方にとらわれてしまい、時に内向き志向になってしまうこともあります。そこでもっともっと新しい風を取り込んでクリエイティブな動きを加速させたいということで、社外の視点や新しい刺激を許容できる場所が求められたんです。
── なるほど!そこでオープンイノベーションへと舵を切られた。
実は最初は誰もそんなことは考えていなかったんです(笑)ただ、新しい取り組みをということで、集められたメンバーも多様でした。リーダーは食品業界経験もメーカー経験も持たない人、他のメンバーも社外からの出向者や、入社三年目のカルビーの「カ」の字が分かってきた程度の若手、といった具合に多様性が重視されました。
── 属性の偏りをなくし、思い込みを打破する体制。
その体制に対して、三年で三つのヒット商品を生み出すことが課せられました。もちろん、カルビーがこれまで100人近い人数で研究開発してきたことを、わずか三年で数名が成し遂げるのは中々に難しく、目標達成は成し遂げられませんでした。しかし、プロジェクトは失敗とはみなされず、その後も存続されることになったんです。
── どのような価値を残せたのでしょうか?
やっぱり、外部とのネットワーク構築ではないでしょうか。Calbee Future Labo設立時のメンバーはたった三名で、自分たちだけでやるのは限界があると考えたのです。だからこそ、積極的に社外との関わりを増やして、そこからヒントを探し出すことしか道がなかった。結果的にオープンイノベーションを実現したことに価値があるのだと私は感じていています。
── オープンイノベーションの実現。
これまで、社内で新しいものを作る時、「カルビー工場内の設備で作れるかどうか」という判断基準があったのですが、私たちはカルビーの生産ラインすら取引先の一つに過ぎない、という柔軟な考え方に徐々にシフトしていきました。もし仮に、自分たちがお客様のために作りたいと思うものを、より上手に、より美味しく、より安く、より早く具現化できる施設が社外にあるなら、積極的に使っていこう、そんなイメージです。
── 大胆に舵を切られたんですね。
そしてもちろん、生産という観点だけでなく、商品開発の分野でも変化がありました。一般の方々を登録制のサポーターとして「一緒に商品開発しましょう!」と巻き込み、インタビューに協力してもらったり、試食調査で率直なフィードバックをもらったりと、生活者とより深く関わる機会を増やしていったんです。
── 描いた理想に至るための組織の在り方が再構築されていったんですね。そんな部署でご活躍の堀江さんはどうしてStartupWeekend(以下SW)に興味関心を持たれました?
元々は当社の新規事業開発の支援をしてくださっていた常川さんが宇都宮でSWを初開催することがきっかけだったんです。社内で部長から「誰か行く?」と情報共有があり、「広島から宇都宮は遠いけれども、ちょっと面白そう。遊びに行ってみようかな」という軽い気持ちで手を挙げたことが始まりでした。SWの中身も何も知らずに(笑)
── SWに飛び込んでみて如何でしたか?
正直、ハードでした(笑)もちろん私たちも顧客の課題を見つけて確かめて…といったSWで体験することを日々繰り返しているものの、息が長いんです。当初は三カ月を期限に設定していたとしても、あともう少し調査すれば良い結果が出てきそう…となれば、そのまま期限が後ろ倒しになることも。
── 期限があるようでない。
けれどもSWは絶対に三日間でアウトプットを出さなくちゃいけない。期限がセットされた中で成果を出すことの大事さを改めて学ばせていただきました。そしてどんな些細なことでも何かしらアウトプットしたら、何かが前に動いていくんだという感覚を改めて養うことができました。
── そうやって気付き学びを得た後に、広島での開催を目指された背景をお伝えいただけますか?
私が宇都宮の初回に参加した後に、新規事業部のメンバーが二回目に参加したんです。やっぱりSWっていいよね、Calbee Future Laboとも親和性ありそうだよね、なんだか運営側も面白そうだし、と社内で話題になって動き出したんです。
── 無事に広島で開催を終えてみて如何でしょうか?
これまであまり味わったことがない不思議な充実感というか、達成感に包まれました。そして自分たちのオフィスをこんな場にしたかったんだ、と改めて気付けたんです。いろんな人がやってきて、アイデアをみんなでディスカッションして、熱量高く動き続ける、そんな理想の姿がSWというフレームを借りることで、現実になったことに感銘を受けたんです。
── 心躍るエピソードをありがとうございます。そんな風にしてオープンイノベーション、新商品開発の環境作りも手掛けられている堀江さんにお聞きしたいのですが、アイデアをカタチにする際は何に気を付けるべきでしょうか?
「聞くこと」に尽きると考えています。目の前の人が本当に困っていることや願っていることはなんなのか、それを聞き出すしかない。本人がそれに気付いていない場合は、自分たちで仮説を立てて試作を作り、見せていく。これをやったら正解、というものはなく、自分たちの考えるターゲットにアイデアをぶつけ続けることしかないのではないでしょうか。
── 仮説検証あるのみ、ということですね。それでは、その道を歩む方々を支える支援者はどうあるべきでしょうか?
その人たちがパフォーマンスを出せる環境づくりに徹することですね。それが一番の支援につながると思います。
── アントレプレナーにとって理想の環境とは?
タクトさんってアメとムチを上手に使って人の心を焚きつけるじゃないですか(笑)そのバランスが大事ですよね。もし支援者がただ優しいだけの人だと、やっぱり甘えてしまうと思うんです。新しいものを世の中に送り出すって、やっぱり甘いもんじゃない。だからこそ、厳しくもあり、後ろから発破をかけることが大事なんだろうな、と感じます。
── 獅子は我が子を千尋の谷に落とす(笑)
もちろんそれだけじゃ苦しいばかりになってしまうので、いろんな役割を担ってくれる人が必要です。例えば優しく諭してくれる人や、宥めてくれる人、癒してくれる人など、支援者側にも多様性が大事ですね。
── そんな支援者、そしてアイデアをカタチにする人たちが集うコミュニティは、どうすればより大きく育っていくでしょうか?
続きは下記よりお読みください。