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【読書】生涯投資家

この本を読むと著者の印象ががらりと変わります。

私が高校生か大学生あたりの頃、世間を賑わせていた方ですが、その頃の報道といえば、「村上ファンドはお金儲けしか考えないエグい人たち」というような印象を世間に残すようなものばかりでした。

しかし、この著書を通して、一貫して著者が目指していたものが何だったのかということをよく知ることができるとともに、情報の非対称性というものがこれほどまでに真実を見えにくくしてしまうものなのかと、恐ろしくもなりました。

この著書の重要な問いは「著者が目指してきたものや、やろうとしてきたことは何か。そして、コーポレート・ガバナンスがなぜ重要なのか?」です。

ポイントだけ、まとめておきます。

日本経済のことを真剣に考えていた

著者は、投資を通じて世の中のお金(著書の中では「血液」と表現している)の流れを円滑にし、後れをとった日本経済を発展させたいと強く願っています。

企業へ投資をし、企業は投資をしてもらった資金を使って成長を目指す。うまく資金を使えないなら、投資家に戻す。投資家はまた別の企業へ投資する。

こうやって、血液を循環させていくことが経済を回すためには必須だが、日本企業はそれができておらず、これをうまく回るように市場に喝を入れたのが著者のやったことです。

コーポレート・ガバナンスを理解しよう

「コーポレート・ガバナンスって聞いたことあるけど、よくわからん。」

そう思う方は、この著書を読むと大変よく理解できると思います。

コーポレート・ガバナンスの根源は「企業が生む利益やリスク、すべてを背負う株主が投資した資産をいかに守るかということ」だと定義しています。

これがなぜ重要なのか、様々な立場の視点に立ってみるとわかりやすくなります。

・従業員の給料や地位←労働基準法で保障
・取引先←契約によって担保
・株主←会社倒産時にすべてのリスクを負う、資金は戻ってこないかも

保障や担保がない株主の立場を守る要が「コーポレート・ガバナンス」だということです。

コーポレート・ガバナンスが利かない会社は、それ自体が株主にとってリスクだということですね。

コーポレート・ガバナンスとは何か

では、具体的に「コーポレート・ガバナンスとは何か」というと、株主が経営者を監視する仕組みであり、投資先の企業で健全な経営が行われているか、株主価値の最大化を目指した経営ができているか(つまり、企業価値をあげる努力を怠っていないか)をチェックする仕組みであると言っています。

この監視が緊張関係を生むと同時に、株主にとっては資金ロストを防ぐための担保であるとも言えます。

動いているお金が経済を発展させる

著者が日本に必要だと考えている日本経済成長の流れは、以下です。

企業に投資をする
→コーポレート・ガバナンスを十分利かせる
→投資で資金を集めた企業は、成長すること(企業価値を向上させること)を目指して、効率的に資金を使い、積極的な事業展開していく
→成長したら、配当やリターンなどで株主へ還元する
→株主は還元された資金をまた別の企業へ投資していく

だから、余剰資金を懐に抱え込み、現金を蓄えて安心している経営者を「コーポレート・ガバナンスを理解しない、古い経営者であり、家計と勘違いしている」と糾弾しています。

そして同時に、使い道のはっきりしない余剰資金を抱え込んでいる企業が、日本経済の発展を阻害している可能性があることも理解できます。

もっとお金を循環させよう。

他、自身の投資案件や事例も上記の意図に沿った展開でわかりやすく載っており、大変読み応えのある一冊。


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