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職人としてのクリエイター

通勤中は耳が寂しいのでほぼ日のYouTubeチャンネルで「ものをつくるときに、気をつけていること」シリーズを聞いている。
文字通り、クリエイターたちがゲストとして呼ばれ、創作の裏話的なことを語るラジオ番組だ。あまりに僕好みのテーマだし、それをやっているのが個人的にファン歴が長いほぼ日さんだから、聴くに決まっている。

最近聴いたのは絵本作家のヨシタケシンスケさんの回だ。ヨシタケさんはクリエイターにしては珍しく、個性やこだわりを出さず、出版社から依頼されたものを忠実に作ることを大切にしているらしい。理由は「こけたときに他人のせいにできるから」とスッパリ。

また、作家が締め切りに遅れるのはよく聞くが、ヨシタケさんの場合は必ず守るらしい。締め切りに遅れれば遅れるほど期待されてしまうからと、これまたあっさりしている。変に期待させるよりは75%くらいの完成度でいいのでとりあえず出してしまうという考えだ。
素人ながらこれは分かる気がする。この前いただいた広告の仕事で2,000字程度の短編小説を寄稿することになったのだが、ヨシタケさんと同じ考えで、おおよそできたからこれで出しちゃえの精神ですぐに納品させていただいた。ボールをずっと持っておくのが苦しくて仕方ないのだ。2,000字だから修正依頼が来てもすぐに対応できる。そうして添削→修正のラリーを繰り返すことでどんどん良くしていった。

プロフェッショナルといえば、自分の仕事にこだわるだとか妥協しないとか、そういったロールモデルにとらわれがちだ。こだわりぬいた仕事をして完成させた物は、たしかに誰かを幸せにするかもしれない。しかし、その一方で「プロフェッショナル」とやらに振り回されている人がいるのも事実だ。絵本作家なら編集者がいて印刷所の人がいて書店の人たちがいる。いろんな人がいるから締め切りは守る。こだわりは後回しなのだ。娯楽である以前にビジネスなのだから。

良いクリエイターほど自己分析ができているように思う。自分のことをよく知っている。ヨシタケさんも、勝手に物静かな人だと思っていたけれど、謙虚でありながら饒舌で自分を持っている。脚本家になりたい僕は正直、得意なジャンルとか、本当に書きたいことが自分でも分からない。それこそ誰かにお題をもらってそれに沿って書きたい。そして失敗したらその人のせいにしたい。作家というより職人になりたいのかもしれないな。

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松本拓郎
サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。