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プロは語るのでなく、語られる

情熱大陸で本人が言っていたが「イチローは毎朝カレーを食べる」というのはガセらしい。現役当時にNHKに密着され、その時にカレーを食べていたことから話がだんだんと膨れ上がり「イチローはどうやら毎朝カレーを食べるらしい」、「遠征先にも弓子夫人の冷凍カレーを持って行くらしい」など、事実と違う情報が定着したようだ。

周りによって作られたプロフェッショナルってあると思う。あの人はあんな偉業を成し遂げたのだからストイックに違いない、あの人が女遊びなんてしているわけない。しかしどんなプロも人間だ。僕たちが見ているのは表舞台に立っているキラキラした部分だけだ。アスリートでもジャンクフードは食べるし、カレー以外のものも食べる。だからスキャンダルがあったときのバッシングは、勝手にされていた期待と現実との落差が大きければ大きいほど強くなるのだ。

イチローさんは毎朝カレーを食べる、みたいな、そういった逸話は作るものではなく、作られるものだ。一流のプロはいつだって語られる側だ。
10年ほど前、とある投資ファンド代表の本を読んだ。そこで彼は「お金は呼び捨てにするのでなく、お金さんと呼ぶようにしている」と彼なりのプロフェッショナルを語っていた。
僕は性格が悪いので、その後の彼のインタビュー記事などを追うようにしている。お金には敬意を払わないといけない。カネと呼ぶことなど問答無用。おをつけるだけでも足りない。お金にはさんをつけよう。嬉々としてそう語っていた彼はいま、「お金さん」と呼ぶことをやめている。フツーに「お金」って言っている。
そしてやはり、そのファンドの成績は悪い。

イチローなら絶対に「お金さん」と呼ぶことをやめないし、それをわざわざ公言もしない。だから彼はプロフェッショナルで、あれほどまでに白髪が似合うのだ。
カレーを毎日食べてるか食べてないか論争については、「真実は食べてないけど、毎日食べてる方がおもしろいから」という理由で静観しているらしい。

そういえば高校同級生でムーチンっていう子がいて「ムーチンは2週に1回美容室に行っている」という都市伝説があったけど、あれは本当だったのだろうか。たしかに髪型はずっと同じだった気がする。それも彼なりのプロフェッショナルだったのか。

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松本拓郎
サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。