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Vol. 11「花の都ダナン」

「めっちゃ快晴じゃん!!ベトナムどうなってんだ!?」

僕らはすっかりベトナムの北部を抜け、中部エリアまで来ていた。どうやら3月天気が崩れるのはベトナム北部のみらしく、中部に入った瞬間、この数日間一切感じることのなかった「日差し」を僕らは感じ、すっかりウキウキしていた。 

このウキウキな気分を更に高まらせてくれたのが、更に道を進んで行った時目に入ってきた「海」の存在だ。僕ら3人は登山サークル出身者ということもあり、山に対する思いは人一倍あると思っていた。しかし今回のガス欠の一件で、もう暫く山はいいと思っていたからこそ、海が僕らの目に入ってきたときは嬉しくてたまらなかった。

すっかりテンションが上った僕らは、エンジンがヒートしないようバイクを要所要所で安めながら、着実に前へ前へと足を進めていった。強烈な日差しが僕らの肌を焼き痛みが襲うものの、気付く頃には出発地点から200km離れた古都である「フエ」に僕らは到着し、目的地のダナンまで目と鼻の先としていた。

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「ようやくダナンだな。ついにここまで来たな、、!!よし、今日は遊ぶぞ!!」

僕らは旅6日目にして、ついに花の都「ダナン」に到着した。ここまでの走行距離約800km。色々なアクシデントが重なりに重なったが、毎年10000人近くがバイク事故で命を落とすこのベトナムという地で、よく死ぬこと無くここまでこれたと思う。生きてるだけで丸儲けってやつだ。

まだ目指すべき場所であるホーチミンには着いていないものの、ここまでこれた自分たちにプチプレゼントということで、これまで一泊400円台のホテルだったのを、今日だけ1000円台のホテルにしようということになった。しかも昨日の償いか、オオハシが全額払ってくれるという。ありがたい話だ。

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ということで、僕ら一行はオオハシが予約してくれたホテルへと向かうことになった。写真で見る限り、とても1000円で泊まれるようなクオリティーではないホテルを予約していてくれたということもあり、僕の心は完全に踊っていた。

「あいつらマジどういうこと?部屋たくさん空いてんのに、なんで俺ら宿泊できないんだよ。」

オオハシは憤りを隠せないのか、近くの壁を蹴っては痛い痛いと叫んでいる。それをみるあべじゅんの沈痛な面持ちは、今でも忘れない。アホばっかり。

簡潔にいうと、僕ら外国人旅行者はコロナの関係で宿泊ができないということだった。ただ僕らの場合、幸いにもホテル側がキャンセルメールを送っていなかったことから、タダで別のホテルを紹介してくれたため、野宿するということにはならず済んだ。

しかし紹介されたホテルがまあ酷い酷い。外装は至って問題ないのだが、中に入ると丁度出来たてですかと突っ込みたくなるほど何もない。しかも部屋に案内され入ると薄暗くい挙げ句、異常に冷房が効いてて寒い。極め付きは、使用済みコンドームがゴミ箱に放置されているという始末。

今日ばかりはいいホテルでゆっくりしたかったこともあり僕らのテンションは少しばかり下がったが、これまでの道のりのことを考えるとこんな小さなことでがっかりすること事態馬鹿らしいとなり、すぐさま頭を切り替え、僕らはネオンの光が灯るダナンの歓楽街へと勢いよく飛び出した。

僕ら3人は、ダナンビーチ側にある海鮮居酒屋でビールと新鮮な海鮮にありついていた。

やはり海が近いからか、これまでベトナムで食べてきたどの海鮮よりも安く新鮮でうまい。そのせいで酒も進み、すっかり酔っ払った僕らが話すことは無論エッチな話である。

ダナンっm



「タクロー、ここの店良さそうだぜ。女の子も可愛いし。オッケー予約しとく」

さすがはオオハシ。国内だろうが国外だろうが関係なく、携帯片手にどんどん優良店を見つけ出していく。一方であべじゅんはいうと、いつもだったらすぐさま店を調べるのに、今回は終始行きたくない行きたくないの一点張りだ。

「なにどうしたのあべじゅん?らしくないじゃん。なんかあった?」

あまりに乗りが悪いため、何かしらの理由があるのかと思い訊いてみると、

「俺飲んだら絶対○んこ勃たなくなるんですよ。まじっすよまじ。」

そんなくだらない理由が通るわけないだろあべじゅん。国会の法案じゃないんだぞ?ということで、勃たないから無理っすというあべじゅんのことを、泥門VS神龍寺戦時の阿含を無視するかの如く華麗に無視し、半ば強制的に連れて行く案が僕らの中で可決された。(いろいろな意味で)

「えーっと、ここまでお願いします。はい、構いません。お願いします〜」

海鮮居酒屋をでた僕らは速攻でタクシーを捕まえると、すぐさま店の住所を運ちゃんに教え、僕らのエデンまで向かってもらった。オオハシと僕は終始笑顔なのに対し、あべじゅんはイライラを隠せないのか一人禁煙の車内でマルボーロを吹かし、運ちゃんと喧嘩をしていた。せっかく僕らにも平和な時間が訪れたというのに、空気が読めないやつだ。

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車に揺られること15分。繁華街から少し離れたところにある、派手な佇まいをしたお店の前で僕ら3人は降ろされた。中に入ると、滞在先のホテル同様何もなく、ただ殺伐とさひて空間の中に一つポツンと受付デスクとソファーがあり、その後ろにはトラの毛皮が掛けられていた。

「ウェルカムトゥーアワーストア。プリーズハバシート」
奥からオーナーさんらしき人の声がきこえてきた。お茶を準備していたようで、こっちへ来るとお茶を渡すや否やソファーに座らせられ、プランの説明を始める。愛想よく振る舞うオーナーさんの姿からもこの店が良店ということが伺え、ますます僕の期待が高まっていった。

「オーケー。ユーファースト」

受付で会計を済ませると、オーナーさんが僕のことを呼び店の奥を指差した。ついに試合開始か。オオハシとあべじゅんに別れを告げると、リングへと繋がる花道を格闘家がゆっくりと歩くように僕は歩きだした。そしてエレベーターの中に入りリングがある3階のボタンを押し、緊張を抑えるために深く深呼吸をした。

その時である

「#'%&&'$#$&%'&!!!! %'%&$'!? %''!!!!」

何を言っているかわからなかったが、多分ベトナム語だろう。エレベーターの中にいる僕にでも聞こえるほど大きな悲鳴が聞こえてきたのである。おい、嘘だろ。今日くらいは旅の労をねぎらわせてくれるって約束したじゃん。なんで約束破るんだよ。

「チーン」

エレベーターが3階に着いた。僕は危険を察知したため、必死にクローズのボタンと下行きのボタンを連打していたのだが、その行為虚しく、ゆっくりエレベーターのドアが開いた。

ドアが開くと、更なる絶望が僕を待ち受けていた。


「愛しのホイヤン」に続く





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