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読書における二つの登山ルート
最近、読書や知的探究を登山の比喩で考えることがある。
また、最近社内企画しているで哲学書の読書会において課題本の選出で議論になりその中で文系と理系の読み方の差に違いがあることに気づきがあったのでまとめてみたいと思う。
議論になったのは古典的原著(1次文献)から読むか入門・解説書(2次文献)から読むかの2つの方法についてである。私は前者が文系的、後者が理系的な読み方に相当するのではないかと思った。
上記のつぶやきのように読書を登山に例えるのはあまり好きではないが、これらのアプローチを登山に例えながら考察していこうと思う。
文系的アプローチ:頂上を目指す登山
文系の学問では、原著、すなわち1次文献を重視する傾向が強く見られる。これは、知識の探求を頂上を目指す登山に例えることができるのではないだろうか。
原著重視の傾向
例えば、哲学を学ぶ者がカントの三大批判書の読破を目指すように、原典に直接触れることが重視される。この姿勢は、テキストの深い理解と解釈を目標とする文系の特性を反映している。
歴史と権威への傾倒
また、文系の学問では、歴史的文脈や著者の権威が重要視されがちである。原著を読むことで、その時代の思想や文化的背景を直接理解しようとする姿勢が見られる。
ピラミッドの頂点としての原著
文系的アプローチでは、原著が知識のピラミッドの頂点に位置づけられる。学習者は、2次文献や解説書を踏み台としつつ、最終的には原著の理解に到達することを目指す。
理系的アプローチ:基礎から最新の知見へ
対照的に、理系の学問では、最新の研究成果を重視し、必要に応じて基礎理論や原著に立ち返るアプローチが一般的である。「巨人の肩の上に立つ」という言葉があるように今での成果を活用し、最新の研究を行うのが理系のスタイルである。これは、広大な裾野を持つ山を登るようなイメージに対応すると思う。
最新の研究成果重視
例えば、量子力学を学ぶ者が必ずしもアインシュタインの原論文を読むことを目指さないように、最新の教科書や論文が重視される。この傾向は、急速に進歩する科学技術の特性を反映している。
機能主義の重視(プラグマティズム)
また、理系の学問では、理論の実用性や応用可能性が重要視される。最新の研究成果は、過去の理論を基に発展したものであり、より洗練された知見を提供すると考えられている。
ラミッドの底辺としての基礎理論
理系的アプローチでは、原著や基礎理論が知識のピラミッドの底辺に位置づけられる。これらは重要な基礎として認識されつつも、最終目標は最新の研究や応用にあるとされる。
両アプローチの比較と分析
文系と理系のアプローチには、それぞれ特徴的な目標設定と方法論が見らる。
目標設定の違い
文系:原著の深い理解と解釈を通じて、思想や概念の本質を把握することを目指す。
理系:最新の研究成果を理解し、それを応用や新たな発見につなげることを目標とする。
各アプローチの長所と短所
文系的アプローチの長所は、原典の深い理解を通じて思想の本質を捉えられることだが、時代遅れの知識に囚われたり権威主義に陥る危険性がある。
理系的アプローチの長所は、最新の知見を迅速に取り入れられることだが、基礎理論の深い理解が不足する可能性がある。
研究分野の特性との関連性
文系の学問は歴史的・文化的文脈が重要であるため、原著重視のアプローチが適している。
理系の学問は技術の進歩が急速であるため、最新の研究成果を重視するアプローチが効果的である。
結論
ここまで文系と理系の読み方の差を見てきた。結局どちらのアプローチを採用すべきかは難しい。2次文献を読むことで1次文献を読むことの助けになることは確かにあるが、2次文献読んだからって1次文献を自分で読むことができるようになるわけではない。
結局は「文系的な歴史・権威主義」と「理系的なプラグマティズム」のバランスを取ることが重要なのではないだろうか。両アプローチには長所と短所があり、それらを適切に組み合わせることで、より効果的な学習効果を創出できる可能性がある。
段階的アプローチの採用
参加者の理解度や興味に応じて段階的なアプローチを取ることが有効だ。
まずは2次文献(入門書や解説書)から始め、徐々に1次文献(原著)へと進むことで、両アプローチの利点を活かすことができる。
テーマ別の選書
哲学の各テーマや概念に応じて、1次文献と2次文献を適切に選択する。
例えば、現代的な応用が重要なテーマでは2次文献を中心に、歴史的文脈が 重要な概念では1次文献を重視するなど、柔軟な選書を行う。
補完的な資料の活用
1次文献を主に扱う際は、現代的な解説や応用例を補完的に提供し、2次文献を中心とする場合は、原著からの重要な抜粋を併せて紹介するなど、両アプローチを補完的に活用する。
議論の多様性の確保
1次文献と2次文献の両方を取り上げることで、歴史的な文脈と現代的な解釈の両面から議論を展開できる。これにより、より多角的で深い洞察が得られる可能性が高まる。
批判的思考の促進
原著の権威に頼りすぎず、かつ最新の解釈にも疑問を投げかける姿勢を維持することが重要だ。1次文献と2次文献を比較検討することで、批判的思考力を養うことができる。
実践と理論の橋渡し
哲学的概念の現代社会への応用を考えるセッションを設けることで、「理系的プラグマティズム」の利点を活かしつつ、「文系的歴史・権威主義」の深い洞察を実践に結びつけることができる。
フレキシブルな運営
参加者のフィードバックや興味関心に応じて、1次文献と2次文献の比重を適宜調整していくことが望ましい。これにより、読書会全体の満足度と学習効果を高めることができる。
結論として、哲学書の読書会では、「文系的な歴史・権威主義」と「理系的なプラグマティズム」の両方の利点を活かす柔軟なアプローチが最も効果的だと考えられる。1次文献の深い洞察と2次文献の現代的解釈や応用例を適切にバランスを取りながら組み合わせることで、参加者は哲学的概念の本質を理解しつつ、それらを現代社会の文脈で捉え直し、実践的に活用する方法を学ぶことができる。
このようなハイブリッドなアプローチは、単に「山頂を目指す」あるいは「裾野を探索する」というような一方向的な学びではなく、山全体を様々な角度から探索するような多面的な知の探求を可能にする。それは、哲学という深遠な学問領域を、より身近で実践的なものとして捉え直す機会を提供し、参加者一人一人の知的成長と洞察力の向上に寄与するだろう。
最終的に、読書会は単なる知識の獲得の場ではなく、批判的思考力を養い、多様な視点を共有し、そして何より哲学的思考を日常生活や現代社会の諸問題に適用する能力を育成する場となることが理想的である。そのために、1次文献と2次文献を巧みに組み合わせ、「文系的」「理系的」という二項対立を超えた、より統合的で創造的な学びの場を創出することが、今後の読書の鍵となるではないだろうか。
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