目標と目的 No.2367
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「目標」と「目的」は、よく似た日本語だが、意味は全然違う。
目標とは「〇〇に向かって」であり、目的とは「〇〇のために」だ。
何かに挑戦しようとする時、「誰かのために」という目的があると、人は諦めない。
すごい力を発揮する。きっとそれが愛の力だからだろう。
水谷 もりひと(魂の編集長)
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日本講演新聞2020年6月22日号から素敵なお話をご紹介します。
目的があることの偉大さをクロスカントリースキーの日本代表選手、
新田佳浩(にった・よしひろ)さんの話を用いて紹介されていました。
『新田さんの家は代々続く米農家だ。3歳の時、おじいちゃんが運転する農機具に左手を巻き込まれ、肘から先を失った。以来、障がい者としての運命を背負うことになる。
翌年の4歳からスキーを始めた。小学校に入るとクロスカントリースキーに夢中になった。3年生の時、地元の大会で優勝。その後、小学校卒業するまで4つの優勝トロフィーを手にした。
しかし、中学になって壁にぶち当たった。両手でストックを使う健常者の選手に勝てなくなったのだ。中学3年の時、スキーをやめた。
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転機は高校1年の時に訪れた。2年後に迫った長野パラリンピックの関係者が出場を勧めに来たのである。新田さんは、見せられたビデオに釘付けになった。新田さんと同じ左手のない選手が障がい者とは思えない速さで滑っていた。
新田さんは長野パラリンピックに出場した。結果は8位入賞。翌年の世界選手権では優勝した。そしてソルトレイクパラリンピックでは銅メダルを獲得した。
4年後のトリノパラリンピックでの金メダルは確実視されていた。スタッフは、新田さんの身体のハンディを科学的に分析し、腰の高さ、膝の角度など、右手一本でも健常者並にスピードが出るフォームを3年かけて作り上げた。
そして迎えた3度目のパラリンピック、トリノ大会。しかし、競技中、想定外のアクシデントが起こった。バランスを崩して転倒してしまったのだ。片手なのですぐに起き上がれなかった。
トリノから実家に戻った新田さん、家にひきこもった。そこにおじいちゃんがいた。
はっと気づいた。何のための金メダルなのか忘れていた。
おじいちゃんは、孫が片腕を失ったのは自分のせいだと、ずっと苦しんでいた。
事故直後は息子であり、新田選手の父親・茂さんに「わしはこの子と一緒に死ぬ」と叫んだこともあった。
その後も自分を責め続けてきたおじいちゃんだった。新田さんはそのことを知っていた。
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トリノを目指したとき、新聞記者にこう言った。「夢は、金メダルを取っておじいちゃんに掛けてあげて、『おじいちゃんは俺にとって最高のおじいちゃんだよ』と言ってあげることです」と。そのことを思い出した。
目的が明確になった。「目標は金メダル、目的はおじいちゃんのために」。新田選手は4度目のパラリンピック、バンクーバー大会に挑んだ。29歳になっていた。
そして、10キロコースと1キロコースで2個の金メダルを獲得し、凱旋した。実家に戻った新田選手は、92歳のおじいちゃんの首に2つの金メダルを掛けた』
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