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バッティングセンター No.2518


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千葉さんは、僕と同じ50代の男性なんですが、あの震災で家族が7人が亡くなり、小学生の息子・瑛太と2人きりになった人です。

瑛太の夢はプロ野球の選手になることでした。

しかし気仙沼に唯一あったバッティングセンターが津波でなくなってしまいました。

それで瑛太は「僕が建てる!」と言い出したんです。


中村 文昭

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日本講演新聞2021年3月8日号からのご紹介です。

3.11から10年が経過した今日。

あの震災と津波で亡くなられた方々、地元を失った方々、生活の大幅な変化を余儀なくされた方々、

この10年死に物狂いで生き抜いてきた方々、それを支えてこられた方々に想いを寄せたいと思います。


文昭さんによる瑛太君の話を続けます。

『千葉さんの仕事は牛乳販売店なんですが、お父さんの後ろ姿を見て育った瑛太は「僕はヨーグルトを売ってバッティングセンターを再建させる」と言い出しました。

それで街を歩く人たちに「僕が家の軒先まで届けるので注文してくれませんか。僕はバッティングセンターを再建させたいんです」と声を掛けていくんです。

瑛太は僕と会うとよく愚痴っていました。

「大人の人は夢を聞いてくるけれど、僕がバッティングセンターを再建するという夢を語ると、『絶対無理!』と言ってくる人がいます。

『小学生のおまえに何ができるか』とか。

そんなん言うなら子どもに夢を聞くなよ」って。

瑛太は本気だったんです。

その瑛太の思いが人から人へ伝わっていくうちに元ソフトバンクホークスの小久保裕紀さんのところまで伝わっていきました。

小久保さんは「何とか瑛太君の夢を叶えてやりたい」と思ったんですね。

プロ野球の選手ってみんな子どもの頃、バッティングセンターで山ほど練習してきた人たちです。

だからバッティングセンターに熱い思いがあるんです。

瑛太は「気仙沼に何か復興のシンボルが出来れば」と作文まで書きました。

それがある作家さんによって本になり、その本の帯に小久保さんが推薦文を書いてくれました。

それでプロ野球選手たちからの多大なる支援が集まって、2年後に「気仙沼フェニックスバッティングセンター」が完成しました。


「フェニックス」というのは「不死鳥」という意味で、「不死鳥のごとく」という気持ちで付けたそうです。

だけど、地元の人は「フェニックスバッティングセンター」とは呼ばないんです。

小学生がヨーグルトを売って造ったバッティングセンターだから、みんな「ヨーグルトバッティングセンター」と言うんです。

行ってみると打席数はたった7席でした。なぜ7席なのかというと、亡くなった家族の人数分なんです。

打席に番号が振ってあるんですけど、普通は1番、2番、3番ですよね。ここはいきなり37番とかなんです。

「なぜ37番なの?」と聞いたら、瑛太のお父さんの千葉さんはこう言いました。

「僕の妻は美奈子という名前でした。だから、美奈子の『みな』を数字に置き換えて37番にしたんです」


瑛太も今18歳です。彼は、甲子園に行き、ゆくゆくはプロ野球の選手になりたいという思いで高校野球の強豪校に入りました。

練習初日、あまりにも体のデカイ連中が同じ1年生に山ほどいて、しかもレベルが高過ぎる。

とてもじゃないけどこの中でレギュラーになるなんて不可能だと思ったそうです。

その瞬間彼は入部初日に「諦める」という選択をするんです。


彼は僕に笑顔で「僕は諦めさせられたんじゃない。違う方向で頑張ると決めたんです」と言ってました。

「あの地獄から這い上がってきた気仙沼っ子の根性だけは見せてやろう」と思って、死に物狂いで勉強したそうです。

そして、イギリスのオックスフォード大学とケンブリッジ大学、両方受かりました。

「妹たちを含めた7人分の人生を生きるんだ。

7人分、世界中の役に立つ人間になりたいんだ」と瑛太は言っていました。

「その勉強も『頑張れ、頑張れ』と言われて、やらされている勉強だったらあんなに頑張れなかったと思うけど、

自分で野球を諦めて、自分でこっちの道に行くと決めたから頑張れた」と。

これは瑛太の魂から出て来ているような言葉だなと僕はそう感じました』


「どうせ無理」と子どもの夢を笑う大人ではなく、

子どもの夢を心から応援する大人が増えていけば、世の中はもっと良い方向に変わっていくことでしょう。

変わるべきは大人の方ですね。


それが今生きている私たちの使命の一つなのだと思います。


こんな素敵なお話を届けてくれる日本講演新聞にも是非触れてみてください。

https://miya-chu.jp/koudoku/?catid=22


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