本を30分で読んで忘れない方法
公認会計士で作家の金川顕教さんは、驚異的なペースで本を読まれているお方である。
どのぐらいのペースなのかというと、1日2冊の本を読み、しかもその2冊を「You Tube図書館」で本の要約動画としてアップし続けている。
速読はせずに、1冊30分程度で読んでいるそうだ。それだけ速く読んでいるのに、内容を覚えているのがすごい。
どうすればそのような読み方ができるのか、少しでもヒントを得たくてこの本を手にとった。
読書革命 金川顕教著
結論からいうと、本はどこを読まないかが大切であるということ。
本の内容を20%に絞り込んで見極める。その部分をしっかりと読み、理解することで、全体の80%はわかったことになるというのが、著者の推奨する読書法である。
また本書には、本の読み方だけではなく、読書によって得られるメリット、インプットやアウトプットの具体的な方法などが書かれている。
個人的に特に気づきの多かった項目を3つに絞ってアウトプットしておく。
自己肯定感が高まる
著者は、読書は自己肯定感が高まる最高のツールと述べている。
なぜなら本を書く人は、基本的に自己肯定感の高い人であり、本の中には自己肯定感を高めてくれるようなポジティブな言葉がたくさん入っているから。
自己肯定感が上がると何よりも人としての魅力が増す。だから「ポジティブなよい言葉のシャワー」をたくさん浴びよう、と著者は問いかける。
私は毎朝の通勤時間に、著者の運営する「You Tube図書館」を耳から聞いている。2倍速で聞いているので、10分の動画であれば、4本ぐらいは聞ける。この行為は、「ポジティブなよい言葉のシャワー」を浴びるのと同じことだと最近気づいた。
効果も実感していて、例えば、「話し方」の本の動画を聞いたあとに、職場で上司に質問する、相手主体の会話をして雑談を盛り上げるなど、行動につなげることができている。
そう考えると、習慣化させてしまうのがいいのかもしれない。通勤時間の耳読、寝る前の読書など、自分に合うスタイルを見つけて、自己肯定感が自然と上がる仕組みをつくってしまうことが大切と感じた。
思考の軸を鍛える
読書の目的とはなにか?
著者は、思考の軸を鍛えることだと述べている。
「思考の軸」とはどういうことかというと、以下の通り。
簡単にいえば、自分が物事を判断する際の基準、方法です。誰かに「それって結局どういうことなの?」と聞かれたときに、自分の言葉でしっかりと答えられる力です。
「自分の言葉でしっかりと答えられる力」、情報が氾濫する現代において、これは本当に鍛えるべき大事な力と思う。
数年前までの私の読書は、ただ「情報」や「知識」を得ることが目的になってしまっていた。
それでは「思考の軸」は鍛えられない。読書で得た「情報」や「知識」に対して、なぜそうなのか、自分はどう思うのかと問いかけたり、実際に行動したりすることで、自分の血肉に変えていく意識が大切なのだ。
スマホが普及している現代にあって、物知りであることにあまり価値はない。
知識を得ることよりも、思考の軸を鍛えることを主眼において読書していく必要がある。
4ステップで4回読む
ここが本書の核心部分となっている。
著者の読書法は、4つのステップで異なる読み方をして同じ本を4回読む、という方法である。
ステップ①予測読み‥カバーや帯、著者紹介などで本の内容を予測する。
ステップ②断捨離読み‥一通り本をめくっていき、気になるところ、目に止まったところにマーキングしていく。この段階で本の内容は読まない。
ステップ③記者読み‥ステップ②でマーキングしたところを熟読していく。このとき、単純に書かれていることを読んでいくのではなく、なぜ著者はそのような主張をするのか、また自分はそれについてどう考えるのかなど、深く考えながら読んでいく。
ステップ④要約読み‥他人に本の内容を説明する=アウトプットを意識して、著者が伝えたいことをまとめながら全体像をつかんでいく。
著者が①から④まで読むのにかかる時間は、およそ30分。
4回読んで30分…、驚きの速さと言っていい。
ただ、それは日頃から修練を積んでいるからだろう。
昨日の自分、1ヶ月前の自分と比べて、速く読めるように取り組んでいけばいいだけの話だ。
さて、この4ステップをまとめると、自分にとって必要な部分だけをしっかりと読み、本の内容を要約してアウトプットする、ということになるだろうか。
①の予測読みと②の断捨離読みの段階では、本文ではないところから「著者はこの本で何を伝えたいのか」などを把握し、自分の読むべきところを見極める。
読むべきところを見抜くおすすめの方法は、「はじめに」と「おわりに」を先に読むこと。なぜそうするのかというと、著者が一番言いたい本質的なことが書かれていることが多いからなのだとか。
そして、目次を見ながら、熟読すべきところをマーキングする。ここが断捨離読みである。
私は、「断捨離読み」の方法を読み、これだと思った。
今までは、速く読む=速読のことだと考えていたので、難しいと感じていたが、「自分にとって必要な部分を効率よく学ぶ」と割り切ってしまえばいいのだ。
ステップ③の記者読みでは、絞り込んだページを熟読する。
記者読みとは、著者と対話するように質問と疑問を繰り返しながら読むことだという。
質問と疑問は明確に違う。
質問は「著者の価値観・意見に寄り添う内容」
疑問は「著者の意見に反発する、あるいは疑う議論」
著者の意見に共感するだけではなく、ときには反発し、「おかしい」「わからない」など、芸能記者のようにツッコミを入れながら読むことがポイントである。
このようなことをすることで、「思考の軸」を鍛えていく。本を読む上で重要なのは、何よりも自分の頭で考えることなのだ。
本とどのように対話していいかわからないという方には、次のような視点をもつといいと勧めている。
①問題提議は何か
②問題提議に対する解決策は何か
③何を学びたいのか
④それを学んで、自分はどうなりたいのか。どのような成果、結果を欲しいのか
⑤他の本との共通点、相違点は何か
⑥著者が伝えたいことを3つに絞ると何か
⑦本を振り返って、一番自分に刺さった個所はどこか
「著者と対話する」上で抑えておきたいポイントが網羅されている。
読書の感想に困ったら、この7項目について書くだけでも立派なアウトプットになると感じた。
ステップ④の要約読みは、まとめの作業である。
読んだ本の内容を要約して人に伝えることが、ゴールとなる。
「どんな本でしたか?本の内容をお聞かせください」と聞かれて、ちゃんと答えられるかどうか。私はつい最近まで、「面白かった」ぐらいしか答えられなかった。今はアウトプットしているので、答えられると思う。
今もこのnoteに本書の内容を要約しているわけだが、これがなかなか時間がかかり、簡単ではないと感じている。
本書に書かれた「要約読み」のポイントを抜粋してみる。
・本を読んで、自分は何を伝えたいのかという視点で項目をまとめる。
・まとめるときのコツは、まとめた項目に①、②、③というように、番号を 振っていくこと。
・どの項目を選ぶか、迷ったときは自分の考えを優先する。
人に伝えたいのはどの項目か、3つから5つのポイントに絞って要約する。
著者が伝えたいことが仮にBだったとしても、自分がAの方が重要と思えばためらわずAの項目を選ぶ、といった具合に、「自分基準」を重視していく。
「要約読み」ができるようになれば、人に説明することも容易になり、アウトプットにつながりやすくなる。
アウトプットが重要なことは、今や言うまでもない。
著者も本を読んだ後が本当の読書、アウトプット、つまり人に伝えることで、読んだ本の内容は自分に定着するのです、と述べている。
この要約読みからアウトプットにつなげるまでは大変な作業だが、最も重要な部分。
自分なりの要約をわかりやすく人に伝えられるようにしたい。練習あるのみだ。
まとめ
・読書は自己肯定感が高まる最高のツール。目から耳から読書を習慣づけて、よい言葉のシャワーをたくさん浴びるべし。
・読書によって思考の軸を鍛える。思考の軸とは自分なりの物差しをもつということ。「それって結局どういうことなの?」と聞かれたときに、自分の言葉でしっかりと答えられる力。
・本は4つのステップで4回読む。
①予測読み…カバーや帯、著者紹介などで本の内容を予測する。仮説を立てる。
②断捨離読み…「はじめに」「おわりに」「目次」を読み、著者の伝えたいところ、自分が読みたいところをマーキングする。200ページあれば読むところを40ページに絞りこむ。
③記者読み…絞りこんだ全体の2割のページを熟読する。質問と疑問を繰り返しながら、著者と対話するように読む。ときに芸能記者のようにツッコミながら。
④要約読み…本を読んで、自分が相手に伝えたい内容を3つから5つの項目にまとめる。項目は自分基準で選んでいい。
要約できるようになれば、物事の本質を見抜く力がつく。そして、要約ができたら必ずアウトプットすること。
最後に。
この本に書かれていることを実行したからといって、すぐに一冊30分で読めるようになるわけではない。ただ、何冊も読み、トレーニングを重ねていけば、いずれは限りなく近づけるのではないか?
そんなことを思わせてくれた良書であった。