『行動が結果を変える ハック大学式 最強の仕事術』~脳にインストールするべき3つの考え方
人気You Tubeチャンネル「ハック大学」を運営するぺそさんの初の著書『最強の仕事術』を読んだ。
凡人がスキルを身につけ、仕事で成果を上げるためには、どのように考え、学び、行動すればいいのか。これまでビジネスマンとして多くの課題と戦ってきた、ぺそさんなりの「仕事術」がとてもわかりやすく書かれている一冊である。
結論からいうと、日頃からの考え方を少し変えるだけで、行動が変わり、結果が変わる。つまり、市場価値を高める人になることができる。
だからこそ、自分に足りない部分を効率よく学び、成長していこうとのメッセージがこめられている。
本書は、「マインドセット」「学ぶ」「考える」「動く」「伝える」「管理する」の6つの章で構成されているが、私にとっては、基礎となるマインドセットの部分から学ぶことが多かった。そこを中心に、3つの項目に絞ってアウトプットしておきたい。
作業ロボットにならない
仕事の現場で付加価値を出す人材になるには、どのような心がけが必要になってくるだろうか。
本書には「作業者ロボットになることは絶対に避ける」べき、とある。
私は職場で、資料を作成したり、記録やデータをパソコンに打ち込んだりと「作業」する場面が多くある。もちろん「作業」すること自体は悪いことではない。
ただ、マインドセットが「作業者」のみになってしまうことは避けよう、ということなのだ。
本書で定義されている「作業者マインド」とは、次のとおり。
決められた手順、決められた方法で、与えられた課題を解決するマインド
一見問題ないように見えるが、例えば、「長年続いてきた業務フローの改善」など、答えの決まっていないタスクを突きつけられた場合、この「作業者マインド」しか持っていないとどうなるか。
ずばり、対応できなくなってしまうのである。
私はここを読んでドキッとさせられた。作業者マインドでいることが多かったからである。そもそも、職場で付加価値を出す人間になろうという意識が低かった。
しかし、人生100年時代の今、そのままでいていいわけがない。
では、どうすればいいのか?
著者は、すべてのタスクに対して自分でしっかり考えられるようになるために、作業者マインドを捨てて、「思考者マインド」を持つ必要があると説く。
そして、「思考者マインド」をもつために、日ごろどのような行動をとっていけばいいのか、2つのポイントを解説している。
①インプットに自分の意見を添える
日ごろニュースをみたり読書したり映画を見たりしたとき、自分の意見を添えるようにする。
ニュースをみて憤りや喜びを感じたのなら、なぜ憤りや喜びを感じたのか、感情の理由まで言語化できるとなお良い。
②あらゆる情報に「So What?」と「Why So?」をぶつける
「So What?=だから何?」と問うことで、その情報に対して、自分なりの結論を導き出す。
「Why So?=それはなぜ?」と問うことで、その情報に対して、自分なりの根拠を導き出す。
これらの問いを繰り返すことで、点として得た情報であっても、自分で加工できるようになり、結果的に「思考者マインド」が育っていく。
私はこの2つのポイントを読み、「思考者マインド」を育てるためのコツが、実は日常に隠されていることに瞠目させられた。
本書の良いところは、こうした日常レベルにまで、わかりやすいアクションプランとして落とし込んでいる点にある。
インプットに自分の意見を添える
あらゆる情報に「So What?」と「Why So?」をぶつける
これまで怠ってきたこの2点を習慣化できるように、取り組んでいきたい。
自責感情を選ぶメリット
続いて「自責」という考え方があなたの価値を変えるという話を紹介したい。
ここは私が本書でもっとも心に刺さった項目である。
例えば、仕事上でトラブルが起こった場合、どのように対処すべきか?
自分が起こしたミスならば、再発防止策を考え、同様なミスが起きないよう仕組みづくりをする。これがベストな考えである。
では、自分以外の誰か、例えば自分の部下などが原因でトラブルが起きた場合はどうか。
このとき相手に対して「何やってんだ!」と他責感情になるか、「自分にも責任があったな」と自責感情になるかで頭の使い方が大きく変わってくるという。
他責感情では根本に「原因は部下の注意力不足だ」という感情があるため、「部下が注意深くなるためには」という発想になってしまう。
人は誰もが自分以外の人間をコントロールすることはできない。
上司として、部下にとって最適と思われる方法を提案したとしても、実際に行動するのは部下なので、コントロールできずにモヤモヤする。
一方で自責感情では、コントロールできる自分を軸に、「トラブルの責任は上司である自分にもあったのでは」と考えることで、「自分の工夫でこのトラブルを防げた、もしくは軽減できたのではないか」と考えることができる。
さらに、自分の行動だけではなく、「部署としてチェックの仕組みをつくった方が良いのでは?」といった「全体最適」的な視点になる。
私は、どちらかというと「自責感情」を抱きやすいタイプなのだが、それをずっと損だと思ってきた。おそらく、「自責の念を抱く」=「相手のミスを自分がかぶる」というような自己犠牲的な考えしかなかったからだ。
まずは、こういった「自責感情」のメリットをしっかりと知ることが重要なのかもしれない。
さらに本書には、自責感情を持つことで得られる3つのメリットが紹介されている。
抜粋してみよう。
①全体最適を考えたため高く評価される
・ひとつめのメリットは、所属組織や取引先から高く評価されることです。これは当然の結果でもあります。「全体最適」を考える個人は組織にとって重宝するからです。
②成長スピードが圧倒的に速くなる
・2つ目のメリットは、成長スピードが圧倒的に速くなることです。失敗の数が多い人ほど成長機会が多いものです。その結果評価され、評価された結果、裁量が大きくなる。そして、裁量が大きくなることで、より難易度が高く範囲の広い仕事、すなわち「成長機会」に恵まれることになるのです。
③慣れれば精神衛生面もよくなってくる
・意外かもしれませんが、「全部自分に責任がある」という思考を続けると、中長期的な精神衛生は快適になります。これが3つ目のメリットです。他責感情の人が持つような「あいつのせいで」とか「なんでもっとしっかりやらないんだ」といった負の感情が発生しなくなります。この負の感情が出ないだけで、仕事がかなりやりやすくなります。
実に丁寧な解説である。そして、自責を選ぶことのメリットはけっこう大きい。
いちばん驚いたのは、3つ目の「慣れれば精神衛生面もよくなってくる」というところ。自責の場合、精神的にきついイメージしかなかった。著者も「最初はかなりきついですが」と言っているが、慣れてしまえば負の感情が発生しなくなり、むしろ快適になるというのだ。
これだけのメリットがあることを知っているのと知らないのでは、「自責感情」を選んだあとの精神的安定感は大きく違うだろう。「行動」ももちろん大事だが、こういった基礎の正しいマインドセットを知る、ということも大切なのだなと考えさせられた。
着手正義をインストールせよ
最後に、「行動」こそ凡人が勝つ手段の章より。本文の中で、次のようなフレーズが出てくる。
凡人だからこそ行動をしなくてはいけないという考えをインストールしていきましょう
至ってシンプルな考え方である。
なぜ行動重視なのかというと、行動しないと見えてこないものがありすぎるからだ。
何も準備をせずに行動すれば、当然壁にぶちあたる。しかし、その壁にぶちあたることで、得られるメリットは大きい。
壁にぶちあたるのは「なぜうまくいかなかったのか」「想定に誤りはなかったか」「どうすれば壁を超えることができるのか」こういった大切なことを考えはじめる思考開始の合図でもあります。「とりあえずやってみる」という行動の数が多ければ多いほど、思考の量は多くなるということです。
なるほど、行動すればするほど思考の量が増え、「壁」を具体的にイメージできるようになってくる、ということだ。
一方で、行動をはじめずに準備をする人は、経験していない分、「壁」を明確にイメージできない。結果として、入念な準備が的外れとなってしまうこともあるという。
私は、納得の思いでこの部分を読んだ。
というのも「行動」することのメリットをここ一年で体感したからである。
具体的に言うと、去年の4月の人事異動で、介護職員から介護支援専門員に職種が変わり、新たに仕事を覚えなければいけない立場に置かれたことで、「よくわからないまま行動する」量が圧倒的に増えたことが影響している。
「わからないまま行動する」のは怖かったけれども、当時読んでいた、樺沢紫苑氏の『ストレスフリー大全』にあった「不安は何もしないと増え、行動すると減る」という言葉を胸に、とにかく「関係機関に電話してみる」「人に訊いてみる」「訪問してみる」など、行動を重視した。
その結果、大きなストレスを抱えることもなく、仕事をつぎつぎ覚えていった。何もしないでモヤモヤするよりも、「行動してしまったほうが楽」ということを、完全に脳にインストールすることができたのである。
本書では「着手主義」という言葉が使われているが、こういった小さな成功体験を得たことで、脳が自然とすぐやることを推奨しはじめる⇒その行動から小さな成功体験が生まれる、というような好循環が生まれるという。
「着手主義」は重要なスキルだ。仕事で力を発揮するためにも、仕事を楽しむためにも。「とりあえずやってみる」「課題はあとから見えてくる」このように考えて、これからも目の前の課題に取り組んでいきたい。
まとめ
・付加価値を出す人材になるためには作業ロボットになることは絶対に避けるべきである。
・作業者マインドだけでは、答えのないタスクと戦えない。思考者マインドを持って、すべてのタスクに対して自分でしっかりと考える必要がある。
・思考者マインドを持つための2つのポイント
①インプットに自分の意見を添える
②あらゆる情報に「So What?(だから何?)」「Why So?(それはなぜ?)」をぶつける
・仕事上でトラブルが起こった場合、自責感情と他責感情で頭の使い方が大きく変わってくる。自責感情では全体最適な視点となる。
・自責感情を選ぶ3つのメリット
①全体最適を考えたため高く評価される
②成長スピードが圧倒的に速くなる
③慣れれば精神衛生面もよくなってくる
・凡人だからこそ準備より先に行動をしなくてはいけない。
・行動することで思考の量が増え、「壁」を具体的にイメージできるようになる
・着手主義のメリットを体感することで、脳が自然とすぐやることを推奨しはじめる⇒その行動から小さな成功体験が生まれる、というような好循環が生まれる。
本稿ではとりあげなかったが、本書には、ロジカルシンキングや仮説思考、マネジメントスキルなど、仕事で役立ちそうなノウハウが他にもたくさんある。その時その時の自分に必要な情報を学ぶにはうってつけの1冊だ。時間がたってからまた読み返そうと思っている。