9/18 晴れ ツナと村上春樹(あるいは、ばらの花)
人生で二番目くらいに好きな女に振られた翌日の昼、俺はバスに乗っている。まだ足は動く。
引き出し式の椅子が4席ほど出るくらいにはほぼ満席。前には4歳くらいの男の子が静かにちょこんと座っている。この子は将来イケメンになって欲しいなぁ、イケメンは得だからな。
とか思ってるとひたすら前の席のお母さんに干し芋を要求している。ギャップがすごい。
後ろにはJKだかJCだかのパッとしない女の子。
何か臭うと思ったらシーチキンの缶とフランスパンを持っている。自家製ツナサンド。強い。
ここまで強いと大人になってあなたは苦労しなさそうだとか言われるのかな、知らないけど。
とにかくバスでツナサンドを作るのは法律で禁止して刑法で裁いて欲しい。バスツナ法とか作ってバスツナ警察に突き出したい。
ツナといえば俺はマグロみたいな人間だなと思うことがある。回遊魚。泳いでないと死ぬ。
もちろん休養は必要だけれど、基本的に落ち着いてられない。落ち着くと逆にメンタルがやられたりするみたいだ。でもキャパオーバーでも死ぬ。めんどくさい。マグロはめんどくさい。
好きな小説に村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」がある(今バスの中で前編の羊をめぐる冒険を読んでいる)
この本は俺にとって薬的な要素があって、小学生で出会って以来、人生のことあるごとに何度も読み返している。
村上春樹の小説は、基本的にオチが分かりにくい。なんとなくふわっと終わったり、意味深で終わったりする。だからメッセージ性が強い、起承転結がはっきりしている物語に慣れてる人(日本人の大体がそうなんじゃないかと思う)
は何が伝えたいか判らない、結論がないと言う
でも、「ダンス・ダンス・ダンス」は比較的わかりやすい。結論から言うと「足を止めるな」
といったところか。あくまで俺の主観だけど。
詳しくは是非読んで頂きたい。札幌が舞台だ。
これがまぁ「効く」なぜなら、大体俺がこの小説「摂取」するタイミングは、失恋したとき、人生が行き詰まったように感じるとき。
大体「足が止まっている」タイミングなのだ。
小説という一人称のコンテンツで一人黙々と読むものなのに、読むと元気が出て、一歩ずつ動けるようになるというのは本当に素晴らしい。
いま、それを摂取する必要がないということはきっとまだ踊れているということだ。足がステップを刻んでいる。マグロで言うならまだ泳げている。これを書いていて、それに安心したので読書に戻るとする。旅をするとする。