コーヒーとガムシロップ
「こうやって飲むのが好きなんだ〜」と、三分の一くらい飲んだアイスコーヒーに、ガムシロップ一個とミルク二個を入れて彼は言った。ご機嫌だ。
私はストローに口をつけながら、彼を横目で見て無言で頷く。
「ブラックも好きだけど途中で飽きちゃうから最後に甘くするんだ~」
「一度で2度美味しい!」と私の方を一瞥もせずに続ける。
「最初に混ぜちゃうと後戻りできなくなるからね」としたり顔だ。
私は、ブラックコーヒーが、好きだ。
味なんてそのままでいい。そのままがいい。ガムシロップなんて、邪道だ。第一カロリーのことを考えていない。
そんなことを考えながら「ダメなカップルみたいだね」というと
「わお!詩的表現!」と私のことをやっと見て笑った。
本当に甘ったるい、何にもわかってない笑顔で。
でもその神妙な顔になって「だから君はいつもブラックなんだね、苦くて味わい深い」と考えながら言う。
「わお!詩的表現!」と、返していつもは使わないガムシロップをブラックのアイスコーヒーに入れた。
「たまにはダメなカップルになってみる?」としたり顔をしてやる。
「たまにはいいかもね」と静かに言ってクリームを勝手に入れてくる。
「案外ハマっちゃうかもよ、この飲み方」
「やっぱりコーヒにはミルクとガムシロだね」こっちをみずに言う。
クールぶってるつもりなのかもしれないけれど、ダメだよ。
口角が上がるのを隠せてないよ。
たまにはカロリーなんか気にせず、甘いコーヒーを飲むのもいいかもな。
本当にこの甘さには勝てないな。