今季(2019~2020年)、季節性インフルエンザ患者ピーク、過去12年で最少 COVID-19が影響?

通常、新型コロナウイルス感染症COVID-19が日本各地で急速に広がった2020年2月と3月では、季節性インフルエンザ感染症が流行する時期であった。新型コロナウイルス感染症、季節性インフルエンザ感染症;この二つの感染症に同時に罹患する可能性はあるのだろうか。季節性インフルエンザウイルスの場合、鼻から喉頭までの上気道の細胞への感染が一般的である。一方、新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、上気道に加え、肺の奥の細胞にまで感染して、肺炎を発症させる。この2つの感染症は全く違う病気である。したがって、短期間に両方のウイルスがヒトへと暴露した場合、武漢での報告例のように、両方を同時期に発症することは十分考えられる。これらのウイルス感染症に対する予防は手洗いが基本である。

今季(2019~2020年)、日本における季節性インフルエンザウイルスに感染した患者は、推計約730万人で、2018~2019年の約6割だったことが国立感染症研究所から報告された。季節性インフルエンザ感染症の流行がピークに達した週(昨年12月23日~29日)において、全国約5千カ所の定点医療機関から報告された季節性インフルエンザ感染者数は、過去12年で最も少なかった。つまり、2020年の全国のインフルエンザ累計患者数(厚労省推計、3月29日時点)は、前年同期(約1064万人)の約4割に減少した。

ヒトで流行する季節性インフルエンザウイルスとして、A型2種類とB型1種類の計3種類が報告されている。その年ごとに、流行する季節性インフルエンザウイルスの種類は異なっている。2~3種類の季節性インフルエンザウイルスが同時に流行することも多い。しかし、今季(2019~2020年)では、新型インフルエンザとして流行したA型(H1N1)が9割以上を占め、ほぼ1種類の季節性インフルエンザウイルスでの流行だった。今季では、新型コロナウイルススSARS-CoV-2の感染の影響で、国民の間で、手洗いやマスクの着用などが徹底的に行われている。そのウイルス感染症に対する防御的行動が、季節性インフルエンザの患者数の減少に影響した可能性が高い。

がん治療専門ドクター/癌ゲノム医療/新興感染症                         JAMA Published on August 2020 by 京都@Takuma H   


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