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これって青春 成瀬は天下を取りにいく書評
本屋大賞受賞の「成瀬は天下を取りにいく」。このようなブームには乗らない、乗りたくない、乗ってなるものかと思っていたのに、気付けば宮脇書店で購入して、夢中になって読んでいた。
主人公の女子・成瀬の中学時代から高校時代までの伝説的なエピソードが綴られる。
計6章ごとにメインとなる視点が変わり、多面的に観察される成瀬は、好きを貫き、頂点を目指し、損得の勘定をせず、親友の思いを大切にする。そんな「才色兼備」と絶賛されて然るべき文句のつけようのない成瀬はなぜか、「変わり者」とみられる。
あからさまに仲間はずれにされても成瀬はまったく気にしていない様子だった。トイレに行くのも教室移動もいつも一人で動く。体育の授業で二人組を作るときには必ず成瀬が余ったが、『奇数だから余りが出るのは当然だろう』という顔をして先生と組む。そんな様子も陰で笑われるわけだが、成瀬は本当に何も聞こえていないようだった。
高校入学に合わせて丸刈りにする。それは髪が伸びる速さを知りたい、測りたいから。ほかにも常識外れの宣言を当然といった風にする。そんなことをできる。誰にどう思われようが関係ない。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
「島崎、わたしはお笑いの頂点を目指そうと思う」
そんな、唯我独尊の境地にあるからか突然告白された相手には
「そのような質問をするということは、西浦はわたしが好きなのか」
と聞く。
返答に困る相手には
「この短時間でわたしのどこに惹かれたのか教えてくれないか」
とストレートに聞く。
別れの時も含めて終始やりとりがいさぎよい。
「今日はありがとう、楽しかった」
「そう言ってもらえてうれしい」
成瀬は孤高で凛としている。他人の評価を気にしない。そして価値あると感じたものに向かって行動し、全身全霊を貫ける。
「やってみないとわからないことはあるからな」
成瀬はそれで構わないと思っている。たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。
これって青春だ。